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術式が決まった(わたしだけの乳がん物語 #11)


2023/8/22(火) 麻酔科・歯科チェック、2回目の針生検の結果

朝8:30に麻酔科へ。まずは薬剤師さんから術前に規制されるお薬の説明、その後麻酔科の先生からの問診、最後に歯科衛生士さんから歯のチェック。やっぱり全身麻酔は目覚めなかった時を考えると少し怖いなと思うけど、もはや信頼してお任せするしかない。術前の検査はこれで終わり。

いよいよ乳腺外科で診察へ。診察室に座ると先生のデスクにモニターがあるのだけど、そのモニター上に自分のカルテが表示されている。読まないようにしようと思いつつ、どうしても目が探ってしまう。

針生検の結果、両胸とも良性所見だったとのこと。良かった、ほっとした。心底ほっとした。
この時点でもう右胸だけの問題なら全摘だな、とすぐに頭の中で思った。

右胸の下の方にはパラパラとしたものがあるらしい。今回は、そのうちのひとつに針を刺しただけで、このパラパラがすべて良性とは限らないと。前回の診察で全摘希望と聞いていたため、医師チームで話しあった際に全摘してもいい、という話になったとのことだった。

この時、「はい全摘でお願いします」とひとこと言えばそれで次に進むはずだったのに、ほんのさっきまで全摘一択と思っていたのに、この瞬間、選択肢の可能性を知りたくなってしまった。右胸だけの問題だと分かったからこそ、ほかの可能性を先生と話しながら自分が心の底から納得できる選択をしたいと瞬時に思ってしまった。

まずは、先生に温存だったら胸がどうなるのかを質問した。先生はわたしを診察ベッドに座らせて、場所とマージンをとって摘出したらこんな感じ、というのを説明してくださった。小ぶりなサイズの自分としては、乳首の位置もずれて変形の具合は大きいかもなと感じた。

次に、もし再建する場合はTSを入れずに、切除と同時にシリコンを入れる一次一期再建なら選択肢のひとつとして考えていることを伝えた。すると、再建となるとやはり形成外科の先生の外来で相談する必要があるため、予定を考えると手術の日程は延期になる可能性が高いとのことだった。でも、今の状態なら遅らせても問題ないと優しくも伝えてくれた。

そして改めて右胸はパラパラ怪しいところがあること、左胸は繊維線種の完全に良性であることを確認し、温存や再建の話をしながら自分が少しずつ納得してきていると感じることができて、「いろいろごめんなさい。やっぱりいいです、全摘にします」と言った。
先生には無駄な話に付きあわせて申し訳なかったけど、短い時間だったけど、この時間は必要だったのだと思う。話せば話すほど、自分の性格や自分が望んでいる状態は全摘なんだと納得することができた。

術式決定

これで術式が決定した。右胸全摘+センチネルリンパ節生検。診察中に、当日に執刀してくださる先生と顔合わせがあった。また診察ベッドに腰かけ、胸を切除すること、12㎝ぐらいの傷ができること、センチネルリンパ節生検により腋にも2㎝ほどの傷が生じることを確認した。「乳頭乳輪も無くなりますがいいですか?」と聞かれて、ほんの一瞬だけウっとなったけど、迷いが生じることもなく返事できた。

ただ、全摘になった場合でも自分なりに調べて気になっていたこと、全摘することによって、胸が平坦というより抉れて見える方がいることを聞いてみると、これは脂肪の付き方によるものらしい。わたしの場合はおそらく平坦になるんではないかとのこと。

もうひとつ、ケロイド体質の自分としては、できることなら傷はきれいに一本の線のようにしたいと希望を伝えてみた。先生方は注射や飲み薬によってケロイドを予防できることもあるため、形成外科の先生とも連携して入院中にアドバイスいただけるようにするとのことだった。もちろん手術でがんを取り除くことが最優先だけど、傷はなるべくきれいな方がいい。先生方もちゃんと汲み取ってくださっているのがわかって、本当にありがたいなと思った。

次に病院に来るときはいよいよ入院。診察を終えて、手術の同意、入院手続きに関わる説明を看護師さんから受けた。「術式は迷いなく決められました?」と聞かれたぐらいだから、やっぱり迷っていいのだと思う。自分が納得するまでいくら時間をかけてもいいのだと思う。

今日このあとチャイルドサポートとの面談を控えていること、子供にはまだ伝えられていないことを言ったら途端に涙が出てきた。看護師さんは「かわいそうに、、」とティッシュを渡してくれた。そして、子供にはちゃんと伝えるべき、チャイルドサポートに相談してみるのはいいと思うと言われた。

ここで夫にLINE。左胸は無事だったこと、右胸は全摘で決定したことを伝えると、「おお!良かったわー!」と返事がきた。がんと告知された時のやりとりを考えると、雲泥の差。不幸中の幸い、今回は良い報告ができてよかった。

チャイルドサポートとの面談

前回の診察終わりにソーシャルワーカーにご紹介いただいた、チャイルドサポートの方がお迎えに来てくださった。近くの会議室に入り、子供の性格や子供に伝える上でどんなことを迷っているのかをひとしきり伝えた。担当者の方は、子供が8才なら誤魔化さないことが大切、3Cの原則のもとに伝えることが大事だと言っていた。3Cに関しては事前に調べて理解していたけど、伝える相手を自分の子供に置き換えてシミュレーションしてみると、どこに重きを置いて伝えるべきかが分かってくる。

・Cancer(がん)=がんという病気であることを隠さず伝える
・Catchy(伝染)=がんは、うつる病気ではないことを伝える
・Caused(原因)=子どものせいではないことを伝える

Aくんの性格として、2番目3番目のCに関してはあまり心配しなくても大丈夫かなという印象。自分ごととしての不安や怯えは感じないだろうな。それでも、心配させ過ぎないように声のトーンや表情も気をつけたいと思った。

乳がんであることは夫以外に誰にも話していなかった。5月の定期検査から始まった一連のできごとに対して、わたしがスマホを離さず検索していても、眠れずにずっとゲームをしていても、夫は変わらず穏やかに見守ってくれている状況だった。そのため、夫に感情的に不安や愚痴をぶちまけることもなく過ごしてきたと思う。

強がりでもなく、誰かに言ったところで事実は変わらないのだし、誰かに話を聞いてもらったところで心が軽くなることもないと思っていた。今回のチャイルドサポートの面談では、最後の最後に、ほんの少しだけだけど、言っても仕方ないことを言った。

今まで多くも望まず、何かあれば自分も含めた家族の健康しか願ってこなかったのに、こんなことになって残念。

もうこれがすべてだった。なぜわたしが、とも思わなかった。わたしが乳がんになったのは誰のせいでもないし、わたしはがんになる方の人だったというだけ。それでも、心から残念で悲しいと口に出して言ってみたら涙が止まらなかった。

手術の同意文書

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