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【REVIEW】SCARECROWS

 波乱万丈な人生に書き足された今年の彼へのバックラッシュは凄まじいものだった。私は今でこそ熱心なファンでは無いが、小学生の時にkjの歌を聞きとても感銘を受けた。僕は自分の意志で歩く、let yourself go、Fight for yourselfと彼の書く歌詞は、意志薄弱でなんとなく大人が用意したベルトコンベアに乗るしかない閉塞感を子供ながらに感じていた自分をハッとさせた。アイデンティの獲得は向こうから訪れるのではなく、勝ち取るものだと教えられた気がした。サビのメロディも拝借する過度なサンプリングに落胆してしまい、その後彼の音楽から離れてしまったが、今でも愛憎相半ばするのは子供だった自分に自己啓発をしてくれた存在だったからに他ならない。特別だ。
 他人なので踏み込み過ぎたくないが、強いアイデンティティの希求の理由に彼の父親の存在があったと思う。流行語大賞にもなるようなドラマの主演もしている。降谷建志である前にスター俳優の息子。彼が自分自身でいる事の試練は幼い時からスタートしていたのかもしれない。そしてTheRavensの2ndアルバムにもアイデンティティの獲得というテーマは用いられている。Scarecrowsで歌われる「結び目を解く賢さとか 雨露を払う激しさなら 僕達の本能が本当は知っているから 解け 捨て去ろう」このテーマを扱う事が、裸一貫で本気で表現している事がうかがえる。個人の原点でオリジナルな表現はいつだって人を惹きつける。
 けどそれ以上に、元気に音楽をやってくれていたらそれでいい。


TheRavens「SCARECROWS」 2023.9.27
 

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