見出し画像

「RUSH!」Maneskin(2023)

 マネスキンにハマっていない。ロック復権のトリガー的存在だったからディスりたくないのだけれど、好きになれないものは仕方がない。

 ダミアーノのヴォーカルが耳に合わない。上司から「ああいう時はこうするんだよ〜。」という呆れ混じりの叱責や、同期の「あの時本当ああだったよな〜。」という愚痴や、部下からの「こうこうこういう理由でできなくてですねー、」という失敗の言い訳など、人の口から出る不平不満の音階とひたすら似てる気がするのだ。どうしようもない諦めや真っ直ぐに怒りをぶつけられないやるせ無さが含まれる、あの会話のメロディである。人間だから不平不満は誰しも出るのだが、聞き続けていると微妙に苛立ちが募る。歌詞はそういう感じではないみたいだけれど、なんだかだるくなるのだ。

 けどベースのヴィクトリアはかわいい。私は猫目で丸顔に弱い。インタビューなど読むと知的で自立した女性だ。トップレスにしなくても多分彼女のロジックは多くの人に届く。

 全然関係ないが、私は祖母に「相手は見た目じゃないよ、中身が大切だよ。」という真っ当な教育を受けた事がある。しかし、私はしっかり面食いになってしまった。祖母は略奪愛を成就させた女性だった。真っ当な教育の説得力にやや欠けてたのである。中身を大切にする人は、傷つく人が出てくるので略奪愛は割としない。自慢じゃないが私は浮気も不倫も一度もした事がない。そこだけは反面教師で学んだ。そんな子供は普通拗らせると思うが、母と父は離婚していない。本当に立派だと思う。代わりに私が離婚した。別れた元妻も猫目で丸顔だ。実は祖母の教えは正しかった事を身を削って証明してしまった。

 そんな事を思ってたら、元妻の幸福を願える自分がいる事に気付いた。驚いた。年月がかかったけど、私の知らないどこかで普通の幸せを手に入れて欲しいと思える自分が今いる。マネスキンを聴いてたらepiphanyというのかinspirationというのか突然思った。今までは逆立ちしても幸福を願えなかった。だけど自分と関わった人なら、一度でも愛した人なら幸せになって欲しいと思ってる自分がいる。
 未練も後悔も無いから時間が解決したんだとは思う。だけどマネスキンを聴いてそう思ったのは多分偶然じゃない。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?