上へ上へより、もっと遠くへ


小学6年生のときに、近くの小学校が全部合同で、陸上の競技会みたいなのがあって、私はハードルを選んだ。たしか50mだったと思う。

私は足が速いというわけではなく、クラスの真ん中くらいを自覚していたけれど、ハードルはなんかかっこいいなと思って選んだ気がする。


身長が高かったから、幅跳びや高跳びの方が相対的にはもっと良い結果を出せるかもしれなかったけど、小学生の私は選ばなかったらしい。


ハードル走は、走りながら歩数を合わせないとハードルをちょうど良く飛ぶことができない。すぐにハードルにあたって倒してしまうか、無理にバタバタとハードルの手前で足を合わせることになったりする。

学校での練習でぜんぜん上手く走れず余程悔しかったのか、家にあった段ボールの薄めの箱をハードルに見立てて置いて、家の中の短い廊下を走った。

下の階の人は、ほんとにうるさかっただろうと、今は思うけど、小学生の私は何も気にしていなかった。家でも練習している自分を、どこか誇らしく思ってさえいたかもしれない。


ハードルを跳ぶ時の前の足は地面と平行に、後ろの足もなるべく平行に折りたたむ、できるだけ、ハードルの高さのギリギリ上を跳んで、なるべく遠くに着地するようにする。
なるべく平行に、なるべく遠くに。

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本番の日のことはほとんど覚えていない。上手く走り切ることができたのか、忘れてしまった。

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当たって砕けろ、みたいには思わない。
でも、ぶつかってしまって痛くて、うずくまる、みたいなことがあってもいいよね、みたいな気持ちは持っていたい。
歩幅が合わなくて、ジタバタと、足踏みをしてしまってもいい、と思っていたい。

ただ少し遠くに、もっと前に、足を伸ばしたい。