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気ままに神経科学

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ひとの心の仕組みや知覚体験について、主に神経科学を参照しながら書いています。 cover photo credit: https://www.flickr.com/photos…
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#哲学

神経科学から考える、多様性社会における精神的な「健常」と「異常」の境界線の哲学

僕は神経科学を研究している、つたない学部4年生ですが、神経科学を勉強していると、「精神疾患」と「健常」とみなされる境目は、人間社会により、実に恣意的に決定されているのだなと実感します。 僕は大学以降、理論物理や神経科学に興味があり、人間の知能とか情動を、脳内の化学反応 —— 究極的には物理法則に還元して考えることが増えました。 今世紀になり、例えばうつ病といった心の症状には、医療的なアプローチが必要であるという認識が一般社会でも常識になりつつあり、個人の意志を前提とした「

私たちの意識は、結局物理法則に従っているだけなのか?

「今、この宇宙の物理法則が、このペンを勝手に走らせています」と言ったら変に思われるかもしれません。 0. 導入先日、大学のキャンパスの向かいにある定食屋さんで先輩とランチを食べたんですね。その時、先輩は 「うーん、今日は何となく、チキン南蛮定食にしようかな」 と言ったのですが、注文した後にメニューを片付けると、メニューの下には 「チキン南蛮定食、本日50円引き!」の張り紙が。それを見た先輩はガッカリした様子で、 「意識してなかったけど、確かに俺はメニューを見る前にこの