掌ニ穴ヲアケタルコト


掌に穴を開けた。
正確には水かきの部分、ハンドウェブと言われるピアス、左手の人差し指と中指の間である。
14Gのニードルで刺して貫通させてある。


以前、左手の親指と人差し指の間に穴を開けていた。
半年ほど共に過ごしたが、練炭自殺未遂をしたとき、気がついたら外されており、穴も塞がってしまっていた。
私はそれがとても悲しかった。

あこや真珠のピアスを通してあった


私はピアスにそこまで興味のない人間だと思う。
ただ、掌となると、話は別のようだ。

以前、手首に開けていたこともあったが、あまりしっくり来ず外してしまった。

やはり、掌に穴が開いている、というのがよいのだ。
掌なんて、わざわざ穴を開ける場所ではない。
人間は手を使うことによって進化してきた、ピアスが開いていると細かい動きがほぼ出来なくなる。
デカダンである。貴族のピアスである。
それと同時に罪人のよう、
まるで磔刑のキリストのようではないか。


キリストは、現在は手首(尺骨と橈骨の間)に杭を打たれたことになっているが、
昔は掌に打たれたとされており、そのような絵画が沢山残っている。

なので、敬虔なクリスチャンは掌から血が止まらなくなる現象を起こしたりする。聖痕というのだったか。

この小さな小さなピアスを思う時、キリストのことを思い、私は少し嬉しくなる。

ならば、掌の真ん中、もしくは手首に穴を開ければ良いではないか、と思うのだけれど、
ピアスの穴として完成させることが不可能だからだろう、そこまでの、神経をおかすリスクをとってまで真ん中に開けるほどの興味はない。

私はどうしてもこの穴を完成させたいと思う。

掌に穴のある肉体になりたいのだ。

この小さな穴を少し拡げ、
そうしていつか、その穴に土を詰め、ばらの種を植える。

私の指から薔薇が生えたら、どんなにすてきだろう。
薔薇の根の動きを手中で知ることができたら…と、中井英夫的な妄想に耽ってしまう。
それっぽっちの土では無理かもしれないが、苔ならいけるかもしれない。

であるからして、穴を完成させることは大切なことだ。

薔薇の咲く肉体は、ひとつの惑星といえるだろう。

ハンドウェブは成功すれば一年ほどで完成する。動かすし、細菌の入りやすい部位なのでとても難しい部位だ。


それを目指して、ホットソークに励む。

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