おはなし:サブスク果報

「なあなあ、大鷲くん。」

「なんでしょう神様。」

「神様のご加護は大袈裟すぎて普段使いができない!もっと手軽な恩恵を考案してくれないか、って嘆願書が来てるんだよお。」

「不敬ですね。ランク制にしたご加護サブスクでもはじめます?」

「君が1番不敬だねえ。例えば?」

「人柱1人で5年の英華、自動選別コースです。」

「ああ〜コンプラアウトすぎて祠壊されちゃう。他はないの?」

「定期御参りコース、一回で3日分の健康。今なら限定企画、御百度参りなら1年分とか。」

「大鷲くん、現代の医療舐めない方がいいよ。人間たちって自力でめっっっっっちゃ生きるんだから、まじで。」

どうしたものかねえ。というか、あついねえ。エジプトさんとこのホルスくんがちょっと最近働きすぎてる、もう少し休んでいいのに。神様はぼやきながら蓮の葉を煽いでいる。

大鷲くん(呼び名の通り、まんま鳥の大鷲である)はそれをみて、あ、と声を上げた。

「それです、神様。」



「斎藤最近残業多いなー。体気をつけなね。」

「まあこれ終わったら落ち着くからさ。それに最近夜は涼しいし、むしろずらして帰りたいくらい。」

「え、何言ってんの?全然熱帯夜だろ。なんならゲリラ豪雨とか多いし。」

「いや気温見たらそうなんだけど、風とか結構涼しくない?雨も降られてないし。もうそろ秋来るかな。」

「斎藤……おかしくなっちゃった……。」

「ええ、そんな。」

 斎藤が首を捻って考えていたら、「部長からー」という声と共に缶コーヒーが回ってきた。冷たくて気持ちがいい。ありがたや……と呟き、プルタブに爪をかけると、隣から「げ、ぬる。」と非難めいた声が聞こえてきた。

手元に目を落とす。キンキンの冷え冷えだ。

…………なんか、ラッキー続いてるな。そういや今日の昼もPayPayのスクラッチが当たったっけ。

「帰り神社お参りしとこ。」

なんとなくだけど。
斎藤は緩い決意と共に、缶コーヒーを飲み干した。



(下界を観察していた神様と大鷲くん、グータッチ)

(「頑張ってる子には"涼"をプレゼント〜〜。」)

(「PayPayはなんでですか。」)

(「斎藤くんは実家帰ったらいつも挨拶してくれるからね!」)

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