『たが為に君は仕える』
私には、亡くなった人の霊が見えるという能力はない。でも、葛藤があったり、迷ったときには、その答えがタイミング良く示されるということがよく起こるようになった。
もうじき、ここの土地を離れる。子どもたちと過ごした場所だから、思い出も残っている。実家にも1時間以内で行くことができる。名残おしいというよりも、逃げ出すようなもので、その罪悪感みたいなものがあった。だけど、やっぱり、ここを離れるべきだ、そう思えるようなイヤなこと、怖いことが続いている。
そんな中での、昨日の「HEAVENESE style」のクライマックストークの内容が、あまりにも今の私にドンピシャで、もしかしたら霊感があるんじゃないかと思ってしまうほどだった。
『たが為に君は仕える』というタイトルからして、私の葛藤を見透かされているようなもの。
前半は、大阪の夏の陣で逃げ出した侍女の話。彼女は、落城の危機が迫っていることを理解し、「生きる」という選択をした。沈着冷静に、誇りをもって行動する。
私が今、住んでいるところは温暖な場所だ。昔から米もよく育ち、豊かな土地だ。そのせいか、上からの指示に疑問も持たずに黙々と従う気質のようだ。実家の両親は、○種券が来たからと早々と3回目を打った。両親はよその土地から来た人間なんだけど。
「大阪の夏の陣で逃げ出した侍女」は、20歳前後だったらしいけれど、私は高齢者予備軍だし、それほど「生きたい!」とは思わない。でも、こういう人たちに巻き込まれて無駄死にするのはゴメンだ。
昨日遭遇したイヤなことというのは、露出狂だ。この季節にだよ!昼間で、すぐ横でテニスを楽しんでいる人が何人もいるのに。しかも私はおばさん。液体は頭を狂わすから、これから狂った人が増えてくると思う。何の疑問を持たずに上からの指示に従う気質の人が多いところであれば、特に多くなることも考えられる。
大阪城内でまさか落城するという雰囲気などなかったときに、この侍女は城の一角が燃えているのを見て、逃げることを決意した。
まさに今の私ではないだろうか。私が出くわしたことは、城の一角が燃えているようなものではないか。
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後半は四代将軍家綱のときに活躍した保科正之の話だ。彼は、「殉死の禁止」を行った。それまでは、主君の死に際して、家臣や妻が殉じて死ぬ“殉死”が行われていた。それを禁止した。
主君と家臣の個人的関係ではなく、家のため、藩や国など、もっと大きなものとの関係を重んじるべしということだ。マレさんはとくに公務員を名指ししてこの話をされたけれど、私は「親孝行」というものに当てはめた。
大した家柄ではないけれど、個人的関係である親子を飛び越えた「家」であるとか、国だとか、お天道様だとか、私はそういったものの忠実な僕(しもべ)でありたいと思う。そう、私にとって「故郷」と思えるものに対して。
「他人の心情を察する」のを良いことだとするのは、ほどほどにしたほうがいい。その人のわがままであったり、エゴであったり、それに振り回されて、自分を消費するのは人生の無駄遣いだ。これに「親孝行」を重ね、私はずいぶんと長い間、苦しんだ。「おじいちゃん、おばあちゃんに移さないために、子どもたちも液体を打ちましょう」もまさにこの延長線上にあると思う。
『たが為に君は仕える』は、まさに私に突きつけられている。うっすらとした罪悪感がまだ残っていたのだけれど、完全に払拭できそうだ。