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白いねこ作戦

何年か前、今とは違うアカウントでFBをやっていたころ、FBFの女性が『100万回生きたねこ』を読んで涙が止まらなかったと言っていた。有名な絵本なので、子どもがいる人や、子どもに関わるお仕事をされている人なら誰でも知っていると思う。でも、彼女にはお子さんがいなかったから、40歳を越えるまで知らなかったのだろう。


あらすじは、

100万回死んで、100万回生きたとらねこがいた。
100万人の人が、そのねこをかわいがり、
100万人の人が、そのねこが死んだときに泣いた。
ねこは、1度も泣かなかった。 
あるときは王様のねこ、
あるときは船のりのねこ、
あるときはどろぼうのねこ、
あるときはおばあさんのねこ、
あるときは小さな女の子のねこだった。
ねこはどの飼い主もだいきらいだった。
飼い主の不注意で、ねこは死ぬ。
飼い主は、ねこの死を悲しんで泣いた。
そしてあるとき、ねこはだれのねこでもない、のらねこになった。
はじめてじぶんのことが好きになった。
多くのめすねこが彼のおよめさんになりたがり、気をひこうとした。
ただ1ぴきの白いねこだけが見向きもしなかった。
ねこはその白いねこのそばにいることにした。
やがてたくさんの子ねこが生まれた。
ねこは、自分より、白いねこと、たくさんの子ねこのほうが好きになった。
子どもたちが大きくなって巣立って行った。
ねこは白いねこといっしょに、いつまでも生きていたいと思った。
白いねこは年をとり、ある日、静かに動かなくなった。
ねこは、はじめて泣いた。
100万回泣いて、ねこは白いねこのとなりで動かなくなった。
ねこはもう生き返らなかった。


なぜ、「ねこ」は生き返らなかったのか?

それは、”本物の愛”を知ったから。

というのがオチだと私は思った。というか、作者の佐野洋子氏はそう設定していると思った。FBFの彼女も、佐野氏の意図どおりに、涙腺を刺激されたのだろう。

でも、男性は少し違う感想を持つようだ。

①白いねこの居ない世界なら、生まれかわる意味がないと思ったから。
②初めて、自分のことを愛してくれた、100万人の人間の気持ちがわかったから。
③最愛のねこを亡くして、もう生まれかわる気持ちになれなかったから。
(https://omnamahashivaya.info/archives/1235.htmlより)


佐野氏の作品に『シズ子さん』という、実母との葛藤を描いた自伝がある。

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「毒親」ジャンルにあがってくる本だと思う。私の友人も母娘関係で悩んでいた。自分とあまりにも重なる内容のように思うから、この本だけは怖くて読めないと言っていた。

私もその系列の本としてこの本を読んだ。伝わってくるのは、佐野氏が、自己主張の強い”自立した”バリバリのキャリアウーマンだということ。当時の私からすれば、憧れるような女性。「愛」なんて似合わない、あるとすれば、ボーボワールのような”自立した愛”(ボーボワールも色々と大変だったらしいけれど)で、それ以外は考えられない。

となると、『100万回生きたねこ』で描かれている”本物の愛”って、古風過ぎないか?

「ねこ」が好きになった「白いねこ」は、古風な女性のようだ。絵本の中での台詞は「そう。」「ええ。」しかない。こういう女性を軽蔑し、切って捨てるのが「自立した女」であり、「キャリアウーマン」ではないのか?自分の思いとは対極にある愛を描いたのか?そうなると、ここに描かれている”本物の愛”とやらは、作りものの張りぼてのように思われた。私は、”本物の愛”より「白いねこ」が気になるようになった。


先日のいいふうふの日、この絵本の「白いねこ」を思い出した。私は色白でも、きれいでもないけれど、この「白いねこ」とちょっと重なるところがある。

私がマイノリティになったのは、この茶番が始まってからではない。その芽を作ったのは夫だ。実家の両親まで、夫側についたから、味方は誰もいない。子どももいたから、波風が立つのが嫌だった。だから、自己主張はあまりしてこなかった。白いねこが、「そう。」「ええ。」としか言わないように。

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そうしたら、夫は、勝手に、「くるくると 3回 ちゅうがえり」をするようになった。一般的には、妻の手の上で転がるという言い方をするが。

これは、今の私に使えるのではないかと思った。


ギリシャ文字のどこまで行くつもりなのかは知らないけれど(個人的には一つ前の「クサイ株」を流行らせてほしかった)、新しい株を流行らせるようだ。それに対して「そう。」と言い、

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また、煽っているよ!という声にも「ええ。」と言う。


この「白いねこ」は、自分が死んで、相方の「ねこ」に100万回泣かれたのを見ても、「そう。」としか言わなかったと思う。でも、天国に行った「ねこ」は、イソイソと「白いねこ」の隣に座ったのだろう。

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「そう。」「ええ。」だけで、他人の価値観や人生すらも変えちゃうってスゴイ!

どっちみち、マイノリティの私の言葉なんて通じないのだから、ためしてみる価値はあるかもしれない。夫は攻略済みだから他の人をね。

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