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3曲目: 新田洋&スクールメイツ「タイガーマスク」と大人の事情について、など

曲名:タイガーマスク(「タイガーマスク」より)
歌:新田洋、スクールメイツ
作詞:木谷梨男
作曲・編曲:菊池俊輔
初出盤の発売年:1969年
収録CD:懐かしのテレビアニメ主題歌大全集 [VICL-41085]
曲のキー:Em(ホ短調)

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「虎だ!虎だ!お前は虎になるのだ!」 タァーッ!

いい年になって古いアニメの歌に励まされるというのも、なんだかおかしな話である。

しかし、この曲の特に3番の歌詞は、筆者にとっていつも手の届くところに置いておきたい、薬にたとえれば「救心」のような存在と言えるかもしれない。

♪ 草も 木もない ジャングルに
♪ 死を呼ぶ わなが 待っている
♪ フェアープレイで きりぬけて
♪ 男の根性 みせてやれ

子供の頃は「敵はコロシちゃってもOKなプレーでくるのに、なんで自分はフェアプレーで対抗せにゃならんの」と笑っていたのだが、やっぱり視点が子供だったよなあと、今にして思う。
社会人として真面目に生きていく、というのはこういうことなんだと。
(しかし、最終回でとうとう主人公がキレて、この哲学は反故にされてしまう。ここではアニメのストーリーには触れないので、興味が湧いた方は調べてみてください。)

全体的に緊迫感あふれる歌ではあるが、そんな中で「ゆけ、ゆけ、タイガー」の後、スクールメイツによる合いの手コーラスの「タイガッ!」と短く切るところに、なぜかクスッとさせられる。
個人的にはそこも好きなポイントの一つ。

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タイガーマスクに関しては、いろんな点で雑というか、統一がとれていないところがある。
そもそも主人公の表記は「タイガーマスク」なのか「タイガー マスク」なのか「タイガー・マスク」なのか?

主題歌のタイトルは何というのか? 当時のレコードは何度も再発されているようなのだが、見事にバラバラである。エンディングのクレジットを見ても、肝心のタイトルの記載がないようだ。
本稿では収録CDの記載に合わせて「タイガーマスク」としたが、「行け!タイガーマスク」となっている盤もある。
ちなみに、B面の「みなしごのバラード」も同様で、中には「パラード」と誤植しているシングル盤もあった。(アニメから転載できなかったのか、ジャケットの画もなかなかのバッタもんである。)

上記の3番の歌詞は、オープニングの字幕を書き写したものだが、ネットで検索してみたところ、2行目が「死を呼ぶ」と「血を呼ぶ」の2パターンに割れているのが興味深かった。

まだある。冒頭のセリフは虎の穴のミスターXの声には聞こえないのだが、誰がしゃべっている設定なのか?

このあたりは、いろいろと「大人の事情」が絡んでいるのかもしれない。

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歌は新田洋という人。この名の歌手がタイガーマスクの主題歌(オープニングとエンディングの2曲)以外に歌っている曲を、寡聞にして知らない。
Wikipediaで調べたところ、その後に何度か改名して森本英世となり、敏いとうとハッピー&ブルーに加入したとのこと。

ここまでは「ああ、そうなんですね」という感じだが、彼らの大ヒット「私祈ってます」のリードヴォーカルと同一人物だというのは驚きだった。
筆者的には、「ウルトラセブン」のイントロで「♪セブ~ン」の4声ハーモニーの3番目を歌っているのは尾崎紀世彦、というのと同レベルの衝撃トリビアである。

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音楽を担当しているのは、菊池俊輔という人。
仮面ライダーやV3の主題歌を作曲したのも彼で、古いアニメ・特撮モノ好きの筆者にとっては隠れた偉人である。

アレンジも素晴らしい。
イントロのストリングスと「ジャジャッ、ジャ」のリズムが聞こえただけで引き込まれてしまう。(このシングル・ヴァージョンには一つだけ物足りない点があるが、それは最後に。)

伴奏には結構たくさんの楽器が使われている。歌の合い間に割り込む笛(ピッコロ?)などもその一つ。
ギターもエレキやら12弦やらの音がアチコチから聞こえる。その分、ドラムスの音が小さいかな。

バンド用としてコンパクトにアレンジすれば、ベンチャーズがカバーしてもカッコよさそうだ。
ベンチャーズ史的にも、ちょうど「京都の恋」などを出して健在をアピールしていた頃だと思うので、誰かオファーしてほしかった。きっと山下達郎が『ベンチャーズ・フォーエバー』に収録するような出来になったはずだと信じる。

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最後に。
このシングル・ヴァージョンも十分にマイ・スタンダード行きの資格アリなのだが、テレビのオープニング版に対する思い入れは、それをさらにさらに上回る。
冒頭のセリフやゴングの音などのSEが曲の上から被せられた、いわゆる「リミックス版」。
オープニングの尺の関係で2番がカットされているのだが、大歓声を利用してうまく1番と3番をつないでいるところも効果的。

50年以上経った今、あらためてこのオープニングを見ても、そのカッコよさは全く色褪せていない。
単なるノスタルジーだと言われれば、何も言い返せないけど。

(2022年9月14日 加筆・修正)


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