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11曲目: Cozy Powell「The Blister」とゲイリー・ムーアについて、など

曲名: The Blister
アーティスト: Cozy Powell
作曲: Gary Moore、Don Airey
初出盤の発売年: 1981年
収録CD:『サンダーストーム』(原題『Tilt』) [POCP-1812]
同盤での邦題: ザ・ブリスター
曲のキー: コロコロ変わる

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筆者は記憶力に難がある方らしく、昔の些細なことをハッキリ覚えているかと思えば、重要なことをキレイサッパリ忘れていたりして、損をすることが多い。

ゲイリー・ムーアの名前を知ったきっかけが、ギター・マガジン誌1981年12月号に掲載された本アルバムのレヴューだということはハッキリしている。
その頃筆者が参加していたバンド、その名も「Violence」(笑)のドラマーがコージー・パウエルのファンで、彼がこのアルバムを買って、それを聞かせてもらったのではなかったか。

B面(当時はLPだったので)1曲目に入っていたこの曲を聞いた時の感想は、上記の記事を読んでも読まなくてもほとんど変わらなかっただろう。ただただクレイジー。これは誉め言葉。

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「Gentlemen, start your engines, please.」
(みなさん、エンジンをかけて。)

カーレースのスターターの声を合図に、エンジン音が響き渡り、少しして高速シャッフルの曲が始まる。

コージー・パウエルが最初からアクセル全開で突っ走る中、ドン・エイリーのキーボードがテーマのコード進行を提示し、ゲイリー・ムーアはGのコード(3度は聞こえないようなので、パワーコードだと思う)をギャーン、ギャーンと鳴らす。3人3様のスタート。
みなさん、このテンポでよくプレイできますな。特にコージーの両足バスドラム(いわゆる2バス)。しかもシャッフル。とても人間ワザとは思えん。
ゲイリーの弾くテーマのメロディーは荒々しく、ギクシャク感もあるが、そこがいい。

で、問題の壮絶なギター・ソロ。ミキシングでギターの音を抑えていることもあり、途中から何を弾いているのかよく分からない状態。
これはこれで作品としてはバランス的にもOKだと思うが、ギター好きには不評なミックスだった。まあ、ドラマーのソロ・アルバムということで、ミキサーも遠慮したか、ひょっとして圧力がかかったのかも?

当時はコージーのドラムスとゲイリーのギターの煽り合いに耳がいってたが、あらためて聞くと、それ以外(キーボード)を担当するドン・エイリーも何気にいい仕事をしているのに気づく。この曲でのドンは完全にバックに徹しているので、当時の筆者は気づかなかった。
前作『オーヴァー・ザ・トップ』に入っていた「Killer」とは曲調も参加メンバーも似ているが、意図的にそうしたのかもしれない。ただし、あちらはテーマをドンが弾いているし、特にキメのフレーズなどは「The Blister」よりプログレ色が強いように感じる。
この2曲を兄弟のように扱う人も多く、ギターについては「Killer」に軍配を上げる人もいるのではないか。しかし、筆者はどうやら「The Blister」の方が好みのようだ。曲としても、ゲイリーのギターも。

この曲は、今聞いても「聞くF1」の趣があるし、90年代にテレビでレースを見て盛り上がっていたことなども思い出してしまう。たとえば、アイルトン・セナとナイジェル・マンセルのデッドヒートとか。

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『サンダーストーム』には、このトリオによるトラックがもう1つ、「Sunset」という泣きの曲が収録されている。つまり、アルバムにはゲイリー・ムーアの売りである2つの面がフィーチャーされているわけで、ことこのアルバムに関する限り、ジェフ・ベックはじめ、他の参加ギタリストのファンには大変申し訳ないが、ゲイリーに食われてしまった感がある。

このアルバムの邦題は『サンダーストーム』だが、原題は『Tilt』である。『ティルト』ではインパクトが弱いと担当者が考えたのかもしれないが、『サンダーストーム』だと原題のカタカナ表記だと勘違いしてしまいそうだ。
たとえば、『ドラム運転者の疾走』などはどうだったろうか。(あくまで例です、例。)


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