京大連続講義(2)環境史 ②「想定されていた想定外」瀬戸口明久先生
京都大学のオンライン公開講義
テーマは、ウィズコロナ時代に必要な「人文学」
7/11(土)環境史②瀬戸口明久准教授
「想定されていた想定外:3.11の環境史」
【一言感想】3.11の資料の準備をするのが「つらかった」とおっしゃった瀬戸口先生。涙ちょちょぎれる。
コロナ禍と3.11の共通点
自然の中の人工空間の拡大
コロナ禍:自然のウイルス→巨大なヒト集団→高速度社会
3.11:地震→津波→原発→自然へ拡散する放射性物質
モニタリング
放射線量や感染者数が毎日報道されている。
失われた日常
人のいない町、緊急事態宣言、自粛生活
3.11とは何だったのか
2011年3月11日 14:46 地震発生
2011年3月12日 14:15 福島第一でメルト・ダウンの可能性
2011年3月13日 周囲20キロの住民21万人が避難開始
想定外の自然災害
マグニチュード9.0の巨大地震、30m級の津波
※伝承としても伝わっていない規模の津波
想定外の原発事故
全電源喪失→原子炉冷却の失敗
→メルト・ダウン
(→原子炉の爆発)
※このような事故につながるような原因を想定していなかった。
ありうることは想定していた。何重にも備えていた。
未来の災害を組み込む
安全神話があったけれども、準備はしていた。
・SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワーク)
・大気拡散+放射性物質シミュレーション
・3月23日まで公表されずに批判される
・入力(モニタリング)の欠如 ← 津波で破壊されていた
※事故が起こらないと言われていたのに、あらかじめこのようなシステムが準備されていたことに衝撃を受けた。
モニタリングからシミュレーションへ
地球科学ではモニタリングが発達している。地球全体を観測。
・大気:気象観測→天気予報→シミュレーション
・地震:地震計で観測→緊急地震速報
・津波:波高計で観測→シミュレーション
感染症についても、現在の感染状況を把握(観測、モニタリング)して、次の状況を予測(シミュレーション)していく。同じような手法である。
過去の災害を組み込む
日常を奪う:避難区域の設定 ←風向きなどから設定された
2011年4月22日 警戒区域、計画的避難区域を設定
2012年4月1日 帰還困難区域、居住制限区域、
避難指示解除準備区域を設定
現在 順次避難指示が解除され、帰還困難区域が残されている
そのようにして避難地域の境界を定めているのか?
基準値:年間20mSv以上の放射線量
※一般人が受け入れられるのは年間1mSvが基準。
なぜ基準を作ることができるのか?
災害データの蓄積 → つくりあげられる境界
・広島、長崎の被爆者(1945)→影響評価(ABCC機関)
・大気圏核実験により放射性降下物(1945~60年代)
・チェルノブイリ原発事故(1986)
日常と非日常の境界をつくる
3.11の時に受けた衝撃
それ以前は、科学技術は自然に介入して人間に有用なものであり、「道具」の延長線上に科学技術を考えていた。
3.11以降は考え方が変わった。
科学技術システムは、巨大なもので、地球全体を覆っており、原発それ自体よりも巨大である。科学技術は一種の環境であり、人間と自然との環境を作り上げている。道具の延長線というよりも、世界の科学技術、という考え方に変わった。
次回以降は、もう少し楽しいお話をしたいと思います。また来週、お会いしましょう。
(完)
瀬戸口先生、なんてお優しいのでしょう。語り口も、質疑応答中に表現を考えこむお姿も、優しさに包まれたなら…です。
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