2020/5/7 晴れ 東京

妻から電話がある。家族の話になる。両親が不仲で、いわゆる幸せな家庭の具体的なイメージが湧かないふたり。だからこそ、僕らは具体的にイメージする必要がある。ホワイトボードがある家に住みたい、と結婚する前に彼女に話していた。

密かに憧れているフォロワーさんが、恐らく家でホワイトボードを用いて子供に面積について教えていて、これじゃん、と思った。今の家は立地もいいし、気に入っているけど、やっぱり狭い。子供は早めに部屋を持って欲しいから、引越すなら数年以内。もし都内の中高進学するならまた戻ってこれるかもしれない。結婚前にチェルフィッチュの舞台を観て、三茶のオイスターバーで食事をした。あれは東京だったなあ。東京。サウナもこんなに沢山ないかもしれない。深夜2時にサウナを1セットだけこなし、あえてととのわずに帰宅する。明日から仕事、しかも明日は当直だ。3時に眠りにつく。音楽は流さない。

目を覚ますと身体が重い、が、こころは割と軽い。スーパー・ファーリー・アニマルズを聴きながら出勤する。明らかに人が増えている。連休前はガラガラだったのに、車内はわずかに混雑している。密だなあ、と暗い気持ちになる。満員電車にまた平気で乗れる日がくるのだろうか。「Northen Lites」の開放的なフィーリングに救われる。スティールパンの響きが好きだ。『Phantom Power』でも多用されていた。15歳の夏休み。音楽を聴く以外何にも楽しいことがなかった時代のサウンドトラック。

仕事は程々に忙しく、16時にはすっかり疲れている。職場に泊まるか家に帰るか考える。呼び出しのリスクを覚悟で家に帰る。帰り道の時点で数回電話があり、先が思いやられる。家で宅二郎を注文してみる。ヤサイマシマシニンニクマシアブラマシカラメマシ麺半分。15分で届く。家で二郎…!と静かな感動に震える。麺はワシワシでスープも二郎感がしっかりある。満足なり。放心しているとまた電話が鳴る。ため息をつく。

『ウォッチメン』の最終話を邪魔されたらとても悲しいから観るのは明日にしよう。せめてもと思って、Pop Life The Podcastのウォッチメン回の第1回を聞く。レファレンス元についての言及が多くてワクワクする。携帯やインターネットが存在しない世界観なのは恥ずかしながら気付かなかった…。アメリカがベトナム戦争に勝っている平行世界であることもやっと理解する。過剰にハイコンテクストでありながら、エンターテインメントとしての強度も保たれている。

レファレンスとサンプリング(つまり教養)を張り巡らせながら、全世界規模のマスに向けたエンタメを作る技術をアメリカは産業レベルで確立している。自国のルーツを参照元に、あちらこちらに引用を散りばめ、サブリミナルに現在を炙り出す日本版『ウォッチメン』。あれば絶対観たい。例えば第二次世界大戦に日本とドイツが勝利した並行世界の満洲を舞台に設定したら、それだけで意図せぬリアルがいくつも掬い上げられるんじゃないかしら。そしてそれは歴史健忘症に対する有効な治療になる。抑圧され健忘した記憶を取り戻すには、再び出会い直すしかないからだ。しかも、違うかたちで。


今日の一曲/Super Furry Animals「Calimero」


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