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根子岳滑落事故 2020/11/23

こんにちは。長崎県雲仙市のアウトドアショップ、マウンテンウエストピークのノザキです。
昨日、熊本県阿蘇市の根子岳で滑落事故が発生しました。

熊本 NEWS WEBより
11月24日 14時56分
熊本県の阿蘇五岳のひとつの根子岳で、23日、登山をしていた50代の男性が滑落し、24日朝、死亡しているのが見つかりました。23日午後3時40分ごろ、熊本県の阿蘇市と高森町にまたがる根子岳で、福岡県から登山に訪れていたグループから「友人の男性が滑落した」と消防に通報がありました。警察と消防の23日夜までの捜索では見つからず、捜索を再開したけさ7時半頃、消防のヘリコプターが、滑落した場所から50メートルほど下の崖で男性を発見して救助しましたが、すでに死亡していたということです。死亡したのは福岡市の教員山崎義典さん(56)で警察によりますと、友人とともに4人のグループで、23日午前中から根子岳を訪れ、当時は下山する途中だったということです。警察によりますと、一緒に下山していたグループのメンバーは、根子岳で一番高い標高1433メートルの天狗峰の西側の稜線付近からロープを使って降りていた際に、山崎さんが滑落したと話しているということで、当時の状況を調べています。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20201124/5000010640.html

阿蘇根子岳天狗峰。九州の登山者には説明の必要もないと思います。東峰、南峰、西峰、天狗峰からなる根子岳の象徴的存在である天狗峰。東峰からのルートが震災で崩れた今、一般登山者ではその鞍部に近づくことすら難しく、確かなクライミング技術を持った者が十分な装備を用意して挑む場所です。私も震災で崩落する前の東峰からのルートで一度、震災後は日ノ尾からの西峰ルートで二度、天狗峰には登頂しています。グレード的には難しいクライミングではないのですが、標高1433メートルという高度のため非常に緊張を強いられるクライミングとなります。

そんな根子岳天狗峰に初挑戦するお客様のYさんを案内するため、まさに事故があった11月23日、根子岳を訪れていました。
私たちは翌24日に登頂予定だったので、下見を兼ねて南峰から天狗峰を見てみようという事になり、大戸尾根登山口を出発、12時30分に山頂へと到着しました。ときどきガスがかかるものの、南峰からの眺めは素晴らしく西峰から天狗峰へ続くギザギザとした岩の尾根をクッキリと眺めることが出来ました。よくみるとローソク岩の手前の懸垂降下ポイントに4人組のパーティーが確認できます。これはいい明日のイメージトレーニングになると、Yさんに懸垂ポイントやロウソク岩の説明をしながら観察していました。4人がロウソク岩を巻いた通過したポイントで小休止をしているようなので、谷を挟んでヤッホーと声をかけあいました。
その後、4人が天狗のコルに到着したのが13時を過ぎたくらい。パーティ全員が天狗の山頂に立ったのは14時を過ぎていました。山頂では凧を飛ばしているメンバーがいるなど天狗峰からの景色を堪能している光景が目に浮かぶようでした。

ただ、ロウソク岩を通過していることから日ノ尾から縦走してきたと思われるので、14時を過ぎての天狗峰山頂では、すこしペースが遅いなと感じていました。

全員の登頂を見届け、私達が下山を開始したのが14時10分。その後、民宿へチェックインして翌日の装備を確認しながら準備をしていると、テレビから根子岳で滑落事故という一報が飛び込んできました。
まさか、あのパーティが・・・
ネットで情報を集めると4人組、40m滑落など断片的な情報が出てきます。通報の時間を考えると間違いなくあのパーティか。谷を挟んで声を掛け合ったパーティの事故。しかも明日は自分たちがその天狗峰をアタックする計画です。天狗峰経験者の私でさえ動揺したのですから初めての天狗峰、ましてやクライミングデビュー戦のYさんの動揺は私以上のものがあるはずです。とにかく滑落者の無事を祈ることしかできません。

夜になり滑落者が見つからず翌朝に捜索を再開するとの報道を聞き、明日の山行の中止を決定しました。

そして今朝、滑落者の死亡が確認されました。
正確な状況がわからない状態で推測での話をすることに意味はありませんが、何がおこったのか。ただ天狗峰の北西側の崖へ滑落したという事は、1P目の終了点からの懸垂降下時の事故ではないのでしょう。思いつくポイントはいくつかあります。そのどれもが落ちたら最悪の状況にいたることが想像できます。

私たちの山を使ったレジャーは僅かなミスが生死を分けるということを、まざまざと思い返しています。亡くなられた方は当然無念です。そして仲間、家族、すべての関係者にとてつもない影響をあたえるのでしょう。

気を付けましょう。しつこいくらい確かめましょう、安全を。慢心することなく油断することなく、お互い声を掛け合いましょう。大丈夫か?そこは気を付けろ。私たちが大好きな登山という行為の危険性を再確認しましょう。それは登頂の喜びを阻害するものではなく、より大きなものにしてくれるはずです。全ての人に安全な登山を。

根子岳で亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。


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