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【歌詩】貧乏者

貧乏者

二本足の動物達が
歩道橋の上を散らかしている
僕は胃酸の逆流と頭痛に苛まれ
項垂れる午後三時

 楽園でも地獄でもいいから
 1人きりのところに着きたいの

古臭い電車に乗った
なけなしの金を崩して
蛍光灯の憂鬱
ノイズを拒む暇も無く
肺がレールに沈む感覚

 楽園でも地獄でもいいから
 1人きりのところに着きたいの

懐ほつれ 貧しいのは比べてしまうから
泥土にもつれ 人生のツケが回ってきたんだ
幽霊がツレ 悪い囁きに殺されるのだ
時が来るまで 食い繋いでいよう

 終点駅には 誰もいませんように

  楽園でも地獄でもいいから
  1人きりのところに着きたいの
  逃避でも自決でもいいから
  現実を食い破って抜け出すの

懐ほつれ 貧しいのは比べてしまうから
泥土にもつれ 人生のツケが回ってきたんだ
幽霊がツレ 悪い囁きに殺されるのだ
時が来るまで 食い繋いでいよう







この歌詩について

僕たちは生きている限り、他人という存在に曝される。この歌詩の「僕」にとってはそれが堪らなく辛い。他人と比べてしまう「僕」が嫌でも生まれてしまうからだ。

どこに行っても「他人」がいる現代の社会を息苦しく感じている(=肺がレールに沈む感覚)からこそ、「僕」は「誰とも関わらなくて済むところへ行きたい」と常に願っている。

しかしその願いは、あまりにも内向的な生き方を選ぶものであったため「僕は貧しい」と自分を評している。

後半部分(懐ほつれ、泥土にもつれ、幽霊がツレ)で韻を踏んでいるのは、「僕」の徐々に貧しくなっていく心情を表すため。

(ちなみにこの「貧乏者」は、寝過ごして終点駅まで行ってしまった日の思い出として書いた記憶がある。)



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