見出し画像

ICT支援員として感じるIT用語の難しさ

反面教師

私がICT支援になって気をつけていることの1つが言葉です。特にIT用語は先生に説明する際に使ってしまうと、正しく伝わらないこともあります。そのため相手に合わせて、表現を変えたり、どこまで知っているかを探りながら説明する、といった配慮が必要です。

このIT用語に注意が必要だ、と思うようになったのは、この仕事を始めていっしょに支援した先輩の言葉がきっかけです。まずは、そのエピソードから紹介します。

これまでの私なら

私は30年以上ITエンジニアとして働き、この歳でもITに関れる仕事と、ということでICT支援員を選びました。会社に所属してヘルプデスクとして働いた経験もあるので、パソコンなどITに関わる質問に回答したり、パソコンを設定することには慣れています。

ただし、同じ組織で仕事をしていると、よく使うIT用語は組織内なら問題なく通用します。質問者に説明する場合、IT用語を使って説明し、その言葉の意味が解らない、と聞かれたら別の表現で説明していました。

先輩からの注意

私がICT支援員になって何回かいっしょに学校を訪問した先輩は、社会人2年か3年くらいの若い方でした。大学を出てすぐにこの仕事に就いた方で、一般的に使われるIT用語はよく知ってました。そのため技術的な話をすると楽しかった印象があります。

その先輩に言われたのが、「小学生が知らないIT用語を使って説明しているので注意してね」でした。つい、くせで専門用語を使ってしまったようです。その時は、先輩がうまくフォローしてくれたので助かりました。

さらにその後も、何度か先輩に助けてもらっています。日常的に使っているIT用語を意識して違う表現に変えたり、子供達に確認するようになったのは、これがきっかけです。

先輩にも反面教師がいた

先輩から指摘された時に聞いたのが、反面教師の存在でした。先輩は、先生などの大人や高校生などにICTに関する講義する方の授業を見学したことがあるそうです。そして、そこで感じたのは、IT用語を多用した説明が多く、聞いている児童はあきらかに理解できていない様子だったそうです。

先輩は、自分ならもっと子供達が理解できる表現で説明できるのに、と感じたのでしょう。その経験から子供達に合わせて表現を変えたり、理解しているかをチェックしながら授業を進めるように心がけているそうです。

私も経験が長い分、使い慣れたIT用語を使ってしまいがちです。そのため学校の支援で説明する際には、相手に合わせて表現を変えるように心がけています。

漢字も注意が必要

小学校の支援では、授業の支援として大型テレビにタブレットの画面を表示しながら説明する機会がよくあります。しかし、大人にとっては使い方が読めば解る程度でも、小学生の学年によっては注意が必要なケースがよくあります。しかもこのような画面にIT用語が記載されていることもよくあるので、注意が必要です。

1年生は漢字が読めない

1年生のタブレットの操作を支援していて、困ることの1つが友達の名前が読めないことです。提出された作品を並べて表示し、さらに各児童のタブレットでも見られるようにもできますが、そこには提出すた児童の名前も表示されています。しかし漢字の読めない1年生は、漢字で書かれた友達の名前が読めません。習っていないので当然です。

このように1年生は漢字が読めない前提で授業を実施します。例えば先生が黒板に書く時、児童も読めるひながなを使うなど。さらにアルファベットも読めません。1年生がタブレットを使う場合、補助してくれる大人が複数いないとなりたたないのでは、と思えるほどです。

習った漢字なら読める

漢字が読めない問題は他の学年にもあてはまります。例えば各学年の担任の先生が黒板に書く文字を注意して見ていると、わざとひらがなを使うことがよくあります。その先生はどの漢字まで使っているかを把握して、黒板に書く漢字を使うか使わないかを変えているようです。

さらに言えば、2文字以上の漢字を組み合わせる熟語も、学年によって習っていない場合は、その意味を説明したり別の表現を使ったりします。

タブレットのメニューは難しい?

タブレットを含むコンピュータの画面に使われるメニューやメッセージは、大人向けの表現が使われます。しかし大人にとって見慣れた漢字は、小学生にとってまだ習っていないケースは珍しくありません。かといって、熟語をそのままひらがなにして解るか、というとそうでもない。しかもコンピュータではカタカナもよく使われており、その意味を知らない何をやればいいか解りません。

という訳では、1年生や2年生にとって、タブレットの親切なメッセージは、知らない漢字とカタカナが書かれた意味不明の文章です。しかもそこにもIT用語が書かれていることもよくあります。大人なら秒で対応できることでも、先生や支援員を呼んで操作してもらわなければなりません。

子供達は適用力が高い

1年生や2年生を担当する先生が児童にタブレットを使わせる場合、タブレットの操作に加えてメッセージが読めない児童をどう指導するか、という問題を抱えています。しかし、GIGAスクール構想でタブレットが配布され、わずか1年で使いこなせるようになった児童がたくさんいるのも事実です。

これは子供達の適用力の高さが理由でしょう。最初は苦労したとしても先生が積極的にタブレットを使わせてた結果です。タブレットのメッセージを読んで、適切に対応できる児童も見かけます。ほかにも理由があるかもしれません。子供達のICTとの関りについて気が付いた点を紹介します。

ゲーム機を使い慣れている

今の小学生の多くが自宅でゲーム機を使っています。そのため、ゲーム機でよく見る表現がタブレットに表示された場合、全く問題ないようです。例えば、アルファベットを習っていなくても「OK」が何かは理解しています。さらに「キャンセル」も問題ありません。

まあ「保存」は読めないものの「セーブ」なら解る児童がいたりするものの、全員が理解できる訳ではないので、子供達に解るように説明する必要があります。そうは言っても、ついついいつも使っている表現で説明してしまい、後から理解できていない児童をフォローしていることが多いかもしれません。

親のスマホを使っている

1年生のタブレットを初めて使う授業では、自宅でタブレットを使ったことがあるか聞いているのですが、ほとんどの児童が親のタブレットやスマホを使ったことがあるようです。そのため、画面の操作で苦労している児童を見かけることはほとんどありません。

さらに兄弟がタブレットを使っているので使い方を教えてもらった、という児童もたくさんいます。そういう児童は兄弟がいない児童にも使い方を教えているので、タブレットをよく使うクラスはあっという間に普段使いができるようになります。

GIGAスクール構想の2年目となる今年の1学期中、昨年度1年生だった2年生が、タブレットでWeb検索して画像を探しだし、それを説明する文章を打ち込んで、簡単な調べもの学習のカードを作って先生に提出する操作を難なくこなしている、というクラスも目撃しました。

子供同士の情報交換

これだけ使えるようになったのは、先生が使い方を教えた、というより、先生がタブレットを使う機会を増やしたことで、子供達同志の情報交換により、クラス全員で使える機能を増やした効果なのでは、と思います。

例えば文字入力、親がスマホの音声入力を使って文字を入力している家庭も多いようです。そのため学校で使うタブレットでも、音声入力を使っている児童をよく見かけます。

また、支援に行った際、同じ学校で通う高学年の兄弟が使っているアプリを使えることを自慢する低学年の児童の話を聞くこともあります。タブレットの使い方についても兄弟から教わることは多いことでしょう。

まとめ

タブレットの操作を支援する場合、IT用語や熟語など、児童が知らない言葉を使っての説明を避けて、児童が知っている表現を使わなければなりません。しかし、児童にITの知識が全く無い、ということはありません。自宅で親のスマホやタブレットと使っていたり、ゲーム機で遊んでいる児童がたくさんいます。そのためタブレットによく表示されるIT用語や熟語なら、使ってもクラスによっては問題ないようです。

どの小学校に行ってもICT支援員は児童に歓迎される存在です。しかし、難しいことばかりで何を言っているのか解らない、つまらない授業をやってはいけません。T用語や熟語に配慮し、児童が理解しているかどうかをチェックしながら楽しく学べる授業を目指しましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?