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『つながる。~あるnoterの生き様3』


2月1日

ちょうどキリが良かったので、気になってたSNSに登録してみた。
『note』という、課金ができるSNS。
私に何が売れるのかはさっぱり分からないけど、私が好きなブロガーさんが登録されてるし、まずはいろいろ見て回ろうと思う。

2月2日

すごい。
noteって、すごい。
私は前からブログを続けてるんだけど、いつも何か書いてアップしても反応が無くて、だから気づけば更新もぜんぜんしなくなってた。

なのにここだと、同じこと書いてアップしたら、スキが付くのだ。
ちゃんと読んでくれてるのかは自信がないけど、でも少なくとも私を認識してくれている。

こんな、何もない私を。
だから、noteってすごいと思う。

2月4日

いろいろnoteの中を散歩してみると、本当にたくさんの人たちがいろいろな作品をアップしていてびっくりする。
良いなあと思う人をフォローしていったら、気が付いたらもうフォロー数500人以上になってたり。

どれだけ楽しいのよ、ここって。

2月13日

noteでいろんな人が告知していたライブに行ってみた。
昔からいる人たちばかりだったみたいだけど、だからと言って変な先輩風とか吹かせる人はいなくて、……ううん、むしろみんな優しい人たちばかりだったと思う。

オフ会って初めての経験だったけど、来てよかったな、って純粋にそう思った。友達もたくさんできたしね。

他に才能はないけど、社交性だけはあるんです。
すごいでしょ。

2月27日

noteを始めてもうすぐひと月が経つんだけど、もうそんなに経ったんだ、ってびっくりする。
毎日アプリでnoteをチェックして、フォローしてる人たちのステキなnoteを購入して、私のnoteにコメントしてくれたお友達のフォロワーさんにお返事して、スキもいっぱいつけて、早くタイムラインに新しいnoteがアップされないかと心待ちにする、そんな毎日。

そりゃ、あっという間に時間なんて過ぎちゃうよね。

3月3日

ひな祭り。そして二回目のオフ会参加。
まだ二回しか会ってないのに、もうずっと前から友達だったみたいな、そんな楽しい時間。

このまま、ずっと続くと良いな。

こんな優しくて、穏やかな時間が。

4月15日

実は今、すっごい悩んでいる。
――ううん、悩んでる、とは違うかな。どう反応したら良いか迷ってる、って言った方が正解かも。

先週またオフ会に参加してきた。
お花見オフってことで、すっかりおなじみになったメンバーでお花見をしたんだけど、終わった後、ある男性のnoterさんと一緒に帰ることになって、いろいろ話を聞いちゃったんだ。私のことを他の人がどう思ってるか、とか、そういう話を。

正直、ショックだった。
仲良くしてくれてる、と思ってたのに。
実は裏でいろいろ言われてたみたい。

だから、すっごく迷ってる。
彼女たちとどう接したらいいのか。

どうしよう。

4月17日

ダメだ。

この間のことがあってから、せめてnoteの中だけは普通にしてようと思ってるのに、コメントに返す言葉が浮かんでこなくなってる。

仲良くしてくれてる彼女にホントのとこをメールで聞いてみたいけど、怖くてメールを開いても言葉が出てこなくて。

このままじゃせっかく仲良くしてくれてるみんなが離れていく。
このままじゃせっかく楽しく過ごせてたnoteが楽しくなくなってしまう。

このままじゃ、せっかく作ったこの世界が壊れてしまう。

どうしよう。

4月22日

結局昨日のオフ会には行かなかった。
行ってもどんな顔をしたら良いのか分からなかったし、何よりみんなが怖かったから。

――もう、終わりなのかな。

4月27日

久しぶりにnoteを覗いてみたら、変なものを買いたがってる人がいた。

『あなたの社交性、売ってください』

その人のnoteはスキもちょっとしかついてなくて、コメントはまったくなくて。名前も見かけたことがないから、きっとこれまで他の人のnoteにコメントもしたことないんだと思う。

『私に足りない社交性を持ってる人、
ほんの少しで良いですから売ってください。
言い値で買わせてもらいます』

そう続けられたそのnoteにも、コメントはひとつもついてなかった――
そう、ひとつも。

社交性、かぁ。

4月28日

昨日の人に、問い合わせをしてみた。

『社交性、売りますよ』って。

あっという間にお返事が来て思わず笑っちゃったけど、でもそれだけ必死なんだ、ってことだと思ったから、アップしたらすぐ彼女が買えるように日時をメールで打ち合わせした。

後悔は、――ほんのちょっとだけ。

でも、これで良いんだと思う。

4月30日

午後23時ジャストにアップしてすぐ、左上のベルに赤丸の1が表示された。
念のため確認して、無事に彼女が購入したという通知だったことにホッとする。

これで本当に『社交性』なんてあやふやなものが売れたのか分からなかったけど、でも――
でも、なんかスッキリした気がする。

先週まであれこれ悩んで、自分の中で澱のように溜まっていたドロドロしたものが、するり、と剥がれ落ちた感じ。

うん。
とりあえず、今日は寝よう。

そうしよう。

5月8日

ゴールデンウィーク最終日の夜。
スマホも置いて旅行してた私は、久しぶりに開いたnoteを見てびっくりした。
あの彼女が――『売ります』の彼女のnoteに、たくさんのスキとコメントが付いてたからだ。

大急ぎでコメントをタップして開いてみると、そこにはコメントのやり取りをしている彼女の楽しそうな言葉たちが並んでいて。


ほんと良かったと思ったんだ。
良かったと思ったんだけど、でも――

でもこれで、私からはなくなっちゃったんだ、って。
もうこれで、あの楽しかった時間は戻ってこないんだ、って。
そう思ったら、凄く悲しくなって、涙がポロポロとこぼれてきて。

そんな時だったんだ。
左上のベルマークに、赤丸の1が付いたは。

それは、仲良くしてくれてたメンバーの女の人で。最後にアップしたnoteのコメント欄に、たった一言だけだったけど、書き込んでくれてたんだ。

『元気?大丈夫?』

って。

6月10日

久しぶり。私は元気だよ。

あれから私は、今でもnoteにいます。
最後に声をかけてくれた彼女といっぱい話をして、少なくとも彼女とあと二人は私を心配してくれてて。こんな私でも心配してくれてたんだ、って。

だから今も、noteで楽しく過ごせてます。
前よりは仲良しさん減っちゃったけど、そんなの関係ない。

私をちゃんと見てくれてる人が、ここにちゃんといる。
だから、もう大丈夫。


――今これを読んでるあなた。

あなたは、noteを楽しめてますか?どんな楽しみを、見つけましたか?

良かったら、私に教えてね。

絶対ステキなことだもの。
良かったね、って笑ってあげる。

にかっ』(まちこ)

(Fin)

※この曲が無ければ完成はできませんでした。ありがとうございました。

【動画】たそがれさがし。(mog.×めばえ×阪本)


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