私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション83『蹴り(けり)』
作者駐:
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セレクション83『蹴り(けり)』(328文字)
「ハアッ!」
裂帛の気合いとともに左足を砂浜に叩き込み、蹴り足を頭上高くへ目掛けて振り抜いていく。彼女の放った居合の蹴りは空を切り裂き、男の死角を抜けてこめかみへと迫る。
次の瞬間、男の頭部からゴツッ、という鈍い音が響く。
しかし、顔をしかめたのは彼女であった。
男は壮絶な笑みを浮かべながら、彼女の蹴り足の足首に減り込んだ左の親指を引き抜く。
彼女の右足首、くるぶしの下辺りから鮮血が飛び、彼女は痛みから後ろによろけた。
「油断したな、お嬢」
抜き手を打ち込んでダメージを軽減したとは言え、それでもこめかみに放たれた脚撃は相当な威力であったはずだが、男の壮絶な表情は全く揺らがない。
彼女は相対する存在の強大さを改めて痛感しつつも、右足の痛みを堪えて、再び構えをとった。
(328文字)
『蹴り(けーり)』
蹴ること。足を物に強くぶつけること。キック。「―を入れる」
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