私的国語辞典_表紙絵

私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション41『髪(かみ)』




前項目次次項


セレクション41『髪(かみ)』


                                                                                                                                        

註:今回は内容が内容だけに、18歳未満、及びバイオレンスが苦手な方は、閲覧をご遠慮下さいませ。 













漆黒のが、女の肩を押さえつける俺の手に絡み付く。
まるですらも意思を持って抵抗してくるかのように思え、目の前の浴槽でもがいている女の生への執着心の強さに俺の心が震え上がるのを感じる。
外の寝室では今頃、根路銘が男を始末した銃の手入れでもしている頃だろうか。

『最初の仕事には、銃は使わせない』

そう言った時の根路銘の冷酷な表情が、目の前の修羅のような女の顔と重なり、今自分が何をやっているのか分からなくなる。

(――頼む、早くくたばってくれ、クソ女)

「ごぶっ」

その瞬間、女の口から一際大きな泡が吐き出され、女の身体から力が抜ける。

(……やった、か?)

俺は絡まった黒何本かとともに、女の身体が沈む湯舟から手を抜き取ると、肩で息をしながらそのまま浴室の脇にしゃがみ込んだ。
手に絡み付いた黒が先程の女の執念を連想させるが、今はを振り払う余裕すらない。

だがしかし、初めての仕事は終わったのだ。
これで俺は、根路銘から銃の使い方を……。

その時だった。

「ぐあおぁうぁっ!」
と言う叫び声と、
激しい水音、
そして首に回された火照ったか細い指の感触と、
首を絞められる圧迫感が、油断していた俺に襲いかかってきたのだ。 

「――っくしょ!」

俺は無意識の内に女の右の人差し指を握りしめ、逆手に一気に折り曲げながら、自分の身体ごと浴槽の中に女を押し戻した。


『髪(かーみ)』
 《「上(かみ)」の意からという》
  1 人の頭に生える毛。頭髪。「―が伸びる」「―を結う」
  2 頭の毛を結った形。髪形。「今日の―はよく似合う」

(大辞林より引用)

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?