実話怪談「何で分かった?」

自分語りも含めて書きます。

高校1年生の時の話。

当時、出身地である、ずんだで有名なM県の高校に通っていた。

時期は秋、文化祭も終わった頃。親から「仕事でA県に行くことになった。帰ってくる時期は分からない。長くなると思う。出来れば一緒についてきて欲しい」と言われた。特に前触れもなかった。A県は父親の出身地であり、父方の祖父が居たので一緒に住むとのこと。

一緒に行かなくてもM県には母方の実家があり、祖父母も健全、そもそも住んでいたのもその実家だったので一人になるわけじゃない。正直、行かなくても良いなら行かないと返事をしていたと思う。

ただ、「一緒に来てくれないか?」と聞いてきた父親が泣いていたのを見て、即答で「一緒に行く」と言った。よく分からない感情だったが、自分も泣いていた。現在まで、父親の泣いた姿を見たのはそれだけである。


こうして両親と自分、当時飼っていたパグ♀の3人1匹で父方の実家に引越し、10月に入ってからA県の高校に通うことになった。しかしながらA県に住んでいたのは半年くらいで、その後再びM県に戻り、転校前の高校に編入試験を受けて再度通う事になったが、転校前の同じクラスに「転校生です」と紹介されて教室に入ったのはその学校の長い歴史上、僕だけである。凄い見覚えのある転校生。

大変前置きが長くなってしまったが、A県に住んでいた時に起こったこと。

家は街の中心地から少し離れた住宅地。路殺の位置に建っていた。玄関ドアの曇りガラス部分に黒い人の姿が見えたり、玄関に向かってパグが吠える事が多々あったがそれ以外に特に生活に支障はなかった。

M県に住んでいた時からだが、自室に“何か”が入ってきて欲しくなかったので2階の自室の入り口上にお札を貼っていた。これが良かったのかもしれない。

ある日のこと。学校が終わり、家に着いたのは4時半くらいだったと思う。いつものように祖父、父親ともに仕事に出ていたが、その日は母親が父親の仕事の手伝いで一緒に出ており、朝から夕方まで家を開けるということでパグも連れて行ったので、家には誰もいなかった。パグがいないと僕は寂しい。特に宿題も出ていなかったので、自室で誰か帰ってくるまで少しだけ寝ることにした。

起きて時計を確認すると5時26分。良い感じに寝たなーと思っていたら一階の玄関がガチャンと開く音に続けて「ただいまー」と母親の声が聞こえてきた。帰ってきたか!と自室のドアを開けたが、様子がおかしい。自室は1階と2階を繋ぐ階段のすぐ側にあり、階段の形状はかね折れ階段(L字形)。玄関も階段のすぐ側にあり、玄関の明かりが階段の踊り場付近まで照らす。

でもドアを開けたら真っ暗だった。母親は僕に「何で部屋を暗くするの!」と照明MAXにするくらい、暗いところで作業をするのを良しとしない人だ。なのに玄関の明かりはない。それに「ただいまー」の後の言葉は一切ない。オカシイ、と思っていたら階段下から“何か”がドドドッと勢いよく2階に駆け上がってくるー、


ところで、目が覚めた。夢だった。時計を見た。5時26分。不思議なもので、この時点で「さっき見た夢と同じだ!」と気付かなかった。内容は思い出せないけど嫌な夢を見た気がするなーとボーッとしていたら玄関からガチャンという音と母親の「ただいまー」という声。お、帰ってきたな!と自室のドアを開ける。真っ暗だった。

ここで「あ、何かやばい」と思い、すぐドアを閉めたと同時にドドドっと“何か”が2階を駆け上がってきた。ドアの向こうのモノはドアを叩いたり、ドアノブを捻ったりせず、男とも女とも判断付かない声で「何で分かった?」と聞いてきた。

正直その後はあまり覚えていない。ずっとドアノブは握ってた。珍しく両親と祖父が同じタイミングで帰ってきたのは覚えている。その体験以外で、同じ様に家族を偽って声を掛けてくる“何か”には会っていない。でも玄関の前に黒い“何か”はよく立っていたし、ガラス越しに覗いてくることがあった。


どうでも良いけどパグ♀の名前がゴル子っていう。可愛いのに名前がアレだね、と思うかもしれない。このパグは2代目で、1代目のパグが♂でゴルゴって名前だった。次は女の子だし、ゴル子で良いねって。厳つい。

ちなみに同じ体験談を怪談好きの人に話す機会があったんだけど、僕は建築関係の学校卒業してるから家の簡単な平面図くらいならチョチョイのJOY君だから当時住んでた家の間取り図描いて持って行ったんだよ。説明するの分かりやすいだろうな、って。「君くらいだよ図面描いてきた人」って言われたよね。おわり。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?