夜の掃きだめ

何かできることはあるか。玄関先に散らかる黒のスニーカーとサンダル。散歩の後だからか、汗を書きながら小さなダイニングテーブルでパソコンをひらく。仕事は辞めた。目算はない。勝手に凹む。毎日何をやっているんだ。自分を責めることばっかりは上手くなって、でもきっとその選手権があってもいいところまではいけない。
クラウドサービスの中の、ドキュメントソフトにひたすら今ふわっと浮き上がってきた考えを書き続ける。白い広大な空間の中に、ごみ溜めひっくり返したみたいな文言が浮かんでいる。浮かんでは消えるわけじゃない。消さないためにこうやって書いている。でも、これが誰かに届くわけでも、誰かを揺らすわけでもないと思っている。
文章を書きたいと思っていたのは、なんでだったか。高校生の頃、文理を選ぶ基準は、ガタガタだった。自分の希望なのか、人の予想の値に近づこうとしているのか、ずっとわからない。今でもわからない。理想のものを想像することが苦手だ。
設定がない。ぼくの妄想は、勝手にこうやって書き始まっていくものでしかなくて、構成とか、壮大さとか、巧妙さはない。いや、そもそもお前はちゃんと妄想をしてきていないだろう。

ちゃんと妄想をするってなんだよと思いながら、鼻をすする。まだ季節は春なのに、もう夏みたいな夜で、汗をかき、窓が開いていることを感じ、水を飲みたいなと思っている。
ああ、万能人に本当になりたかった。今でもなりたい。面白くて、かっこよくて、気さくで、優しくて、博識で、でも素直で、人の心を揺さぶれる、そんな人間になりたい。
悲しいかな、みんなそうなりたいと思ってそうなっているわけじゃなくて、本当に自分の興味のまま、あるいは欲求のままひたすら走った結果らしい。お前は、時間があってもしょうもないから、興味もないから、何も動かないし動かさないから、そこの位置になんとなく漂って、いつか藻屑になるんだよ。

自分への否定と、それに酔っている感覚がずっと並行している。自分の抱えている歪み、があるんだとしたら、たぶん取り除いた方がいいんだろう。歪み、というものがあるとして、それは理想の姿からの乖離だけれども、ぼくに対して、イデアのぼくがいるんだろうか?
いるか。まぁ。いや、よく分からんな。とりあえず、なぜか祖父に恥じない人間であろうとは思っている。こんなの、すり込みみたいなもので、でも実際にぼくに刷り込まれているなら、それはぼくの思いなわけなんですよ。

結構書いたな、と思ったので、いったん文字数のカウント機能をオンにする。
全然書いてなかった。というか、書いたら書いた分だけよい、みたいなことも別にない。
誰もたぶん読まないことになるし、でもせっかく書いたんだからどこかに出しておきなよとも思う。

水を入れて飲んだ。一気に書くとき、あんまり息をしていないのかもしれない。脚を組んでみたけれど、態度として不適切だなと思って、すぐにほどく。

定義を揺さぶりだすと、言葉のゲームに陥っちゃうから、ずっとそんな話になるんですよ、みたいなことを千葉雅也が書いていた。
意外と、本を読んでいる成果はそこかしこに出てきていて、そんなに卑下するような生活なんだったっけ?と、海からでて息をする。

意味の分からないことを書いていたとしても、これを読む人は(もしある程度読むとしたら)、どこかしらに意味を見出してしまうんだろう。
意味ってなんだよ、とか言い出すとまた定義が揺れる。

ぼくにとっての理想なんてよく分からないし、何がやりたいんだ?って聞かれてしまったら、自分がやりたいか否かじゃなくて、それをやっているほかの人と比べてしまう。やりたいんだったらそれはピュアにやりたいことで、それをやっていりゃあいい。
お金のことなんかを考えなきゃいけなくて、そんなことは意外と苦手だった。
自分ごととして考える、責任を持つ、大人としての自覚を…。こんなに苦手な言葉たちだったっけか。

どんどんできないことが増えているような気さえする。自分がみじめで、ちいさくて、しょうもない人間だっていう気がしてくる。こんなことは、人様に見えるところに書くもんじゃないと思いながらも、手書きでノートに書くのは非常にめんどくさいので、出来ない。変なところでめんどくさがりだ。
といって、別にタイピングが疲れないわけでもないし、その証拠にさっきから何度も誤字をうっては消している。

あついな。豚丼を食べてすぐに散歩したせいか?成果か?しょうもないな。
しょうもないのは別に元からで、なんとか隠して生きてきただけだったんだよな?どうよ、割とうまく行っていたでしょう?

もう、あたまの中が散漫になってきたな。別の散漫に移行したいな。Twitterでも見よう。
夜にものを書くべきではなさそうだよね、そうだよね、わかる。
でもね、書きたくなったから。無駄に悔しくなっちゃったから。その残り火だとでも思っておいてください。では。またね~~~。


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