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20.日曜日は寝て曜日?

私の父は、土日祝日、夜遅くまで関係なく仕事をする人だ。
昔は携帯電話なんてなかったし、父自体がマメに連絡する方じゃないから、母はいつ帰るかわからぬ父の帰りを夕飯の支度も中途半端に待っているので、相当大変だったらしい。

それでも毎日、私たちのために一生懸命働いてくれてるんだからと、母は父に向かっては文句を言わなかったんだから、偉いというか根性あるなぁと思う。

『パパは帰りが遅い、日曜日も仕事』

我が家の共通認識だった。

話変わって。
私は赤ん坊の頃から母方祖父母の家に預けられることがしょっちゅうあり、少し成長してからもよく泊まっていた。
祖父はボンボン育ちな人で、あまり仕事が好きな方ではなかったので、泊まりに行った際に私が「パパは今日もお仕事だよ」と祖父に言うと必ずこう言った。

「日曜日は寝て曜日。仕事なんかするモンじゃねぇ」

最初はよく意味がわからなかったけれど、幼稚園に通うようになり、曜日の感覚が芽生えて、そこで初めて祖父の言う意味がわかった。

我が家の日曜日は、ちっとも寝ていない。

父が仕事休みの時は、たいてい出かけていた。
父の草野球の試合などについて行ったり、小学校の庭などでトレーニングしたり、赤城山に川遊びに行ったり、芝スキー(グラススキー)に行ったり。
冬は冬で雪があるうちは、ほぼスキーに行っていた。

親戚も多いからなにかと行事があったし、今になってみれば…だけど、若くして結婚したいとこや父の知人達の相談事も父の元へよく持ち込まれていた。

今ならこれらが、どんなにいろんな体験をさせてもらっていたかがわかる。

けれども、曜日感覚が芽生えたて幼稚園児の頭では、おじいちゃんがいつも言う『日曜日は寝て曜日』の方が正しく感じられた。

「パパ!にちようびはねてようびだって!しごとなんかしないでねるひだって、おじいちゃんがいってたよ」

それ以上でもそれ以下でもない。
私はただ父に教えたくて、そう伝えた。

「なにバカなこと言ってんだ!なにが、寝て曜日だ!そんなんじゃ、食ってけねぇんだよ!」

雷直撃。
働き者の父と仕事嫌いな祖父はあまり仲はよろしくない。
私の無邪気な一言は、家の中を険悪にしただけだった。

寝て曜日なんて、もうぜったい言わない。

そう思って、今までそんな言葉すら忘れていたが、先日、祖母と一緒に祖父の遺した色紙を断捨離中、こんなのを見つけて思い出してしまった。

そういえば晩年の祖父は、脳梗塞で倒れてほぼ毎日「寝て曜日」だったな。

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