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34歳会社員がラジオパーソナリティーに転職した話③

「何苦楚魂」

そこはかとなく香るヤンキー臭。
我等命有限静香愛続、夜露死苦。

いや違う。野球ファンの方には馴染みのある言葉かもしれない。
プロ野球BCリーグ福島レッドホープス監督、現役時代はヤクルトスワローズ、メジャーリーグでも活躍した岩村明憲さんの座右の銘だ。

何苦楚魂…人生は、何ごとも苦しんだことがのちの礎(いしずえ)となる

noteを初めてひと月半、どうも「苦しい」「痛い」話が多くなってしまっている。これまでの人生、決していばらのような道だったわけでもないのだが、少なくとも今の私を形成しているのは、三十路前半に起きた苦しい体験なんだろうと思う。まさに私からすると「何苦楚」だったわけだ。


のちの礎となった当時の話をつらつら書いています。前回の内容は、こちらから読むことができます。
34歳会社員がラジオパーソナリティーに転職した話②


チョコレートだなんて可愛いものじゃない

ひどい生理痛で救急搬送された数日後。
私は近所にある大きな総合病院の診察室にいた。

検査の結果、私は「子宮内膜症」を患っていることがわかった。
公益社団法人日本産科婦人科学会によると、20~30代の女性に多く、10人にひとりほどの確率で発症するらしい。発症する原因はよくわかっていない。

どんな疾患か。

子宮内膜またはそれに似た組織が何らかの原因で、本来あるべき子宮の内側以外の場所で発生し発育する疾患が子宮内膜症です。
子宮内膜症は女性ホルモンの影響で月経周期に合わせて増殖し、月経時の血液が排出されずにプールされたり、周囲の組織と癒着をおこしてさまざまな痛みをもたらしたりします。また、不妊症の原因にもなります。
引用:公益社団法人日本産科婦人科学会 子宮内膜症とは


月経時に血液の一部が体外に排出されずに、プールされる。
「子宮」内膜症という名前でありながら、発生する場所は様々。
卵巣だったり、子宮と直腸の間、子宮を支える靭帯、子宮と膀胱の間、まれに肺や腸にできることもあるらしい。私の場合は好発部位である卵巣にできていた。

下図(公益社団法人日本産科婦人科学会より)を見てもらうと両側に小さなボールのようなものがあるが、これが卵巣。この図の右側の卵巣は左に比べて大きく腫れている。

これが卵巣にできた子宮内膜症で、「チョコレート嚢胞」という名前がついている。

ちなみに今この文章を書きながら急にチョコレートが食べたくなったので、最近のお気に入りである森永製菓の「カレ・ド・ショコラ」をひとつつまんだ。

そもそも「チョコレート」だなんて、なんとも可愛らしい名前がついてはいるが、実際は耐え難い激痛に襲われるので「可愛い」だなんてとんでもない。

嚢胞というのは液体などを含んだ袋状の病巣のことを指すが、この袋の内容物というのが、先述の排出されなかった血液。
これが月経のたびにだんだんと嚢胞に溜まっていく。血液というと赤い色を想像するかもしれないが、この溜まった血液が古くなりチョコレート色になることから、この病名がついたそう。


医師の診断によると

さて診察室での話。

医師いわく

・右卵巣にチョコレート嚢胞ができている
・大きさは3~4センチほど
・自然に消えることはないが、すぐに大きくなるということはほぼない
・様子見でOK、3ヶ月ごとに定期検診をしましょう
・大きくなってきたら手術で嚢胞部分だけを切除するかもしれない
・温存もできるが稀に卵巣がん化する可能性もある

もちろん、がん化の可能性…というワードに動揺したわけだが

チョコレート嚢胞患者6398人を平均17年間追跡した結果、46人の卵巣癌の新規発生を認め、本邦におけるがん発生率は0.72%であることを報告した。
引用:公益社団法人日本産科婦人科学会 

確率だけ見ると、だいぶ稀ではある。

ともあれ、今すぐにどうというわけではなく、嚢胞は良性疾患なわけで、その点ではひと安心ではあった。

ただ、生理の度に血液が逆流し卵巣にできた嚢胞に流れ込んでくるわけで、いつまたひどい痛みに襲われるかわからない。

この頃からしばらくの間、鎮痛剤が手放せなくなってしまうのだ。
痛みを感じたら薬を飲むという人は多いと思うが、痛みを感じて薬を飲んでも救急搬送されてしまうという経験をしている私はそれじゃ間に合わない。
そこで生理周期に合わせて生理が始まりそうな頃から生理が終わるまでの10日近く、毎日鎮痛剤を飲み続けるという…なんとも身体に悪そうなことをしていた。

いつまで鎮痛剤を飲まないとならないのだろうか。
いつか手術をすることになるのだろうか。
妊娠しづらくなるのだろうか。
なんで私がこの病気に?

などなど思い悩むことも多かった。

実はこれ以外にも、激動の時期とも言えるくらいにこの頃は私生活でも様々なことが起きていたのだ。


ランニングを始めて

苦しい、痛い、将来への不安…
それらを振り払うように始めたのがランニング。医師にも運動は勧められていた。

平日は仕事後に毎日のように5キロほど走り、週末は狭山湖や多摩湖、航空公園あたりで10キロほど走ってみたり。

流れる景色を見やりながら、汗をかき、ひたすらに走り込んでいると不思議と悩みが消えていく。プライベートの悩みも仕事も病気もすべてがどうでも良くなっていく。

ランニングを始めてからは身体の調子も悪くなく(そもそも鎮痛剤漬けだけど)2月には青梅マラソンに出るぞ!なんて息巻いていた。

あまりに調子がいいので、チョコレート嚢胞なんてもうなくなっているんじゃないの?なんてすっかり軽い気持ちで、3ヶ月ごとの定期検診のために病院に出かけた。


この軽い気持ちが木っ端微塵に砕け散ることになるなんて思いもせずに。
そして、青梅マラソンに出るという計画もあっけなく潰えることになるのだ。

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