越えてはいけない一線
エンバペがパリサンジェルマンと新たに3年契約を結んだ。驚きなのはその金額で年俸が1億ユーロ(約135億円)に加えて、次期スポーツディレクター(強化部門の責任者)と監督の選定や選手の放出などチームのプロジェクトに関与できる権利が含まれているらしい。サッカーに詳しくない人向けに言えば、将来を嘱望され会社の未来と称される若手社員に社長以上の莫大な給料を提示し、会社の経営や人事権にまで関与できる権利を与えるという感じだろうか。
この契約でパリサンジェルマンとしては0円でエンバペを流出させなかったというメリットがあるが、実際にはデメリットの方がかなり大きいのではないかと感じている。高すぎる年俸は経営に少なからず影響があるだろうし(オーナーが何とかするんだろうけど)何より「一人の選手をクラブ以上の存在にしてしまった」のは大きな問題だ。再び分かりやすいように会社で例えるが、いくら優秀だからとはいえ若手社員が社長よりも給料を貰い、会社の経営方針や人事に関与したらその会社で働いている他の社員はどう思うだろうか? 恐らくその若手社員の機嫌を伺いゴマを擦ったりご機嫌取りに走る者もいれば、その体制に嫌気が差して退社する社員も出てくることだろう。
確かにエンバペは今後10年以上に渡ってメッシやC・ロナウドに代わって世界のトッププレイヤーになりうる存在だし、法外とも思える年俸については理解できる部分も多少はある。プロの評価はお金だという考え方を嫌う人もいるかもしれないが、それは決して間違いではない。だがサッカーというものはクラブが監督を選定し、その監督が試合で起用する11人の選手とサブの選手を選ぶのだ。この序列は必ず守らなければならない。選手が監督を選んでしまえばそれはただの傀儡である。そして人事権も掌握すればエンバペの意に反する選手はすぐに干されたり放出の対象になるだろう(現にとある有名選手が放出されるのではという噂もある)そんなクラブで誰がプレーしたいと思うのだろうか。恐らくエンバペのお友達かお金に目が眩んだごく一部の選手だけだろう。
私の好きなクラブでこんな大規模ではないが過去に似たような事例があった。前年にアジア王者になったが監督と主力選手との関係があまり良くなく、翌年に開幕から連敗した直後に突然監督が解任された。形式上は成績不振での解任とされたが監督と主力選手を天秤にかけて選手を取ったという噂が流れた。一時的にチーム状態は上向いたがバランスを崩したまま最終的には崩壊し、次のタイトルを獲得するまで9年もの時間を要した。パワーバランスを崩したチームはだいたいこれと似たような道を辿るだろう。
組織や集団の中で突然一人が力を持ち(もしくは力があると勘違いして)好き放題にやれば、その組織や集団は必ず崩壊する、もしくは内部から反乱が起きてその一人は追放される。越えてはいけない一線を越えてしまったパリサンジェルマンとエンバペが今後どのような道を進んでいくのか注目していきたい。
P.S
これは予想ですが、2年後くらいに崩壊したパリサンジェルマンで立場のないエンバペがレアルに移籍を懇願するも却下され、大幅減俸を余儀なくされて別のクラブに移籍すると思います。。。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?