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(ヤバい。これは絶対ヤバい) ある雨の春の朝。揺れる路面電車の中で、勝村亮はそう内語していた。 (俺はやってない。わざとじゃない。 ……でも、それは通用しないだろうなぁ) はぁ……と、器用に心の中でため息を吐く。 (これだけあからさまじゃ、絶対……) だらだらと冷や汗を流す彼の手の平は、前に立った女性の股間に当たっていたからである。 (……どうしよう) しっとりとした……それは雨のせいか否か……彼女のタイトスカートに吸い付くように。 □ 「やっべ! 遅れる! ぜったい遅れ