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<連載:ABSの国際的な話し合い>   CBD事務局開催のDSIオンライン・ディスカッションフォーラム (1): 2021年4月21日〜5月2日

背景 

コロナ禍対策としてCBD事務局は、ウェビナーによる情報発信と議論の場を提供している。第1回ウェビナー、第2回ウェビナーでは今までの意見まとめ程度であったが、第3回ウェビナーではポリシーオプションの提案、第4回ウェビナーにおいては、ポリシーオプションに関しての評価を行うためのクライテリアについての説明がなされた。さらに、オプションのスクリーニング、ポリシーエクササイズ、費用対効果、コストベネフィット分析、多基準分析(MCA)などが今後の検討も提案された。基準フレームワークとして、カテゴリー、審査基準、評価の手段(図1)がまとめられた。 

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図1:特性に基づいたポリシーオプションの分類1)

 第4回ウェビナー終了後、2021年4月21日から5月2日までの期間で、オンラインディスカッションフォーラム(以下、フォーラム)が開催された 2) 。フォーラムは、ポリシーオプションとカテゴリー、ポリシーオプションを分析するためのクライテリアフレームワーク、実現可能性と適切性の3つにスレッドに分け開催された。

最初の項目である「ポリシーオプションとカテゴリー」には、22項目の投稿がなされた。最初にCBD事務局から、ポリシーオプションのカテゴリーとその他のオプション について、さまざまなポリシーオプションの分類案が提示されているがポリシーオプションのカテゴリーに ついてあなたはどのように考えますか、欠けているポリシーオプションはありますか、との質問からスレッドは始まった。

プエルトリコ大学フォーゲル氏により、まず、持論の自然情報についての利益配分に関する說明が投稿された。すでに多くの場所で自然情報についての利益配分については、「境界線のあるオープン性」が適していることを指摘している、また、商業的に成功したIPRで保護された商品に含まれる自然な情報がユビキタスに存在する場合、境界線のあるオープン性が資金源となることを強調。

ザルツブルグ大学のパルメッツフォッファー教授が、可能な限り低く、シンプルである必要があり、オープンアクセスを基本とすべきであり、その場合、さらなる二国間規制は必要がないことを主張。 オプション4の中で、研究・イノベーションに関する能力開発プロジェクトに公的資金を投入できるように、知的財産権に関する規則を整備・変更すべきであるとコメントした。

ペルー環境法学会SPDA マニュエル・ミューラー氏は、二カ国間主義は対応できない。データベース/DSIのルールを、保全のためのインセンティブとCBDの3つの目的の実現を論理的かつ効率的に整合させる効率的なABSモデルという広い文脈で検討しなければ、脆弱で逆効果なABSに対処し続けることになる。そして「非金銭的利益」になるという単純な結論は、保護を支援するためのインセンティブをしっかりと調整するものではありません、と主張した。

さらに、パルメッツホッファー教授は、基礎研究活動に金銭的利益配分の不適切性を指摘、基礎研究は非金銭的な利益をもたらし、FAIR原則を含むすべての結果を伴う。金銭的な利益は商業利用目的の時点で供給される必要がある。データベースのアクセスに応じて利益を正確に配分することは、殆どの場合幻想である。かわりに、スケールの大きな資金クライテリアを定義することで、生物多様性の高い地域の規模、社会状況により分配を考慮すべきと主張。

統計遺伝学者ブッシュボン氏は、DSIと遺伝資源は同一であるか、同一とすべき。GRとDSIを法的に区別すべきでない。情報を優先すべきである。付加的な情報が意味や価値を持つ。私が持つ情報の考えはフォーゲル氏の自然情報と一致するかもしれない。 科学コレクションは社会に対して公共サービスを提供している。FAIR原則に従うこと。 このように、生物多様性の基礎となる機関やインフラとしての科学的コレクションを継続的に機能させるためには 科学と研究のためには、GRがDSIやその他の標本に関する情報と異なる扱いを受けないことが重要だと思われます。私の現在の理解では、法的考察の基礎となる「情報」への移行は、科学コレクションが現在直面している矛盾した状況の解決策にもなり得ると考えている、と主張。

DSMZ ロドリゴ・サラ氏は、カテゴリーのマッピングとグループ化が必要である、追加のオプションとしてより広範な資源動員もポリシーオプションに影響をあたえるとを認識すべきであり、多国間の普遍的な学際的なポリシーオプションを含めるべきと提案。さらにクライテリアとして生物多様性の枠組みとフォーラムを超えた国際的な繋がりを提案した。

米国名古屋議定書行動グループ(USANPAG)代表のジョスナ・パンデーは、データや知識を含む遺伝資源は公正かつ公平な方法で共有されるべき、提案されているDSIへのABSの拡大が実際にどのように実施されるかが明確でないとできない、提案されたポリシーの影響を適切に理解しないまま、決定することは無責任である。実施方法を検討し、ポリシーの意味合いを特定するまではオプション0のままとすべきである。オプション1,2-1 は科学者にとって実現不可能。オプション2-2は国内法の変更が伴い実現困難。オプション3も実現不可能。オプション4は、さらなる検討を支持する。オプション5は支持するが、DSIのアクセスは自由であるべきで、二カ国間で規制されるべきでない。オプショ2.2のバリエーションは有益であり、DSIの非商業的利益は免除されることになると主張。

フィリピンの弁護士であるエルペディア・ペリアは、DSIは遺伝資源と同一であるオプション1の議論を深めるべき。人権に基づくポリシーアプローチとして先住民、地域コミュニティは、DSI を通じて GR を利用することで、自分たちに与えられるかもしれない利益共有スキームから外されていると感じていることに注意。持続可能な開発政策のアプローチとして、SDGS宣言とリオ宣言を将来のDSI政策の基本原則とすべき。契約上のアプローチにおいてすでに、永久仕様の利益配分契約について反対されている。アルゴリズムのアプローチとしては、DSIの使用するアプリケーションのAPIを介して実行されるべきであると主張した。

さらに、ボッシュボム氏は、遺伝資源は物理的なもので、最初のアナログアクセスフェーズはその使用方法に依存する。DSIは第二の使用となる。初期のアナログ的なアクセスと、二次(デジタル)的なアクセスおよび再利用を区別することを提案する、と主張。

イラン CDB NFP ベッアド・ガレヤジ氏は、発展途上国が、自分たちの生殖細胞や自然界に存在する情報(DSI)へのアクセスを許可することで得られる利益を享受したいと考えているのは明らかですが、代償を払ってまではできません。 しかし、利益配分は、他の当事者が生殖細胞/DSIへのアクセスから得られた製品やサービスの商業化の段階にあるときに、各国の標準的なMATに基づいて行われるべきであると主張。

国立遺伝学研究所 鈴木は、すでに、途上国を含む世界中の人々が、現在の方法で多くの非貨幣的利益分配を受けている。非金銭的な利益配分を明確にする、あるいは可視化する必要がある。また、各オプションの実施により、非金銭的利益配分の阻害要因が発生する可能性がある。これらは慎重に検討されるべきである。すでにいくつかのケーススタディが報告されているが、DSI が遺伝資源の利益配分に与える影響を 網羅的に定量化することが望まれる。また、オプション0とその他の選択肢であるオプション1~5の間には、まだ検討されていない選択肢がたくさんあると思われます。これらを明確にし、さらに検討する必要があります。オプション4のキャパシティビルディングについては、さらに検討する必要があります。
途上国の科学者がDSIに容易にアクセスできる環境、特にバイオインフォマティクス手法を中心としたDSIを用いた遺伝資源の研究開発に関する教育を推進することで、世界中のより多くの人々がDSIの恩恵を受けることが可能になります。DSI-AHTEGではすでにDSIとは何かを議論していますが、DSIの運用上の定義、正式な名称について合意する必要がありますと、投稿しました。

SPDA マニュエル・ミューラー氏は、各オプションの比較は簡単であり、各オプションに名前をつけるべきである。締約国は、必要に応じてABSのパラダイムを変え、国際的なABSの枠組みを大きく変えることに合意することがとができる。可能性の芸術としての政治に固執すれば、解決を遅らせ、保全に影響を与えるだけであり、ABSとDSI/情報には、アンデス連合D391やフィリピンEC247以来、約30年の歴史がある、実現可能性の調査は必要でしょうか?既存の研究や文献を徹底的に調査すればよいと主張した。さらに経済学的レントはABSの鍵と主張。


UK ストラスクライド大学 ステファニー・スイッチャー博士は、われわれの報告書での賛成反対の意見は、あまり反映されていなかった事、多国間での解決策は条約改正を必要としない、CBDの下のCOP決定で具体化することができると主張。欧州委員会への報告書の「技術的・科学的強力の強化」オプション4においては単なる能力開発のためのものではなく、途上国にとっても重要な利点がある、提案した利益共有のための多国間プラットフォームは、原則的なアプローチを採用し、科学的な協力とキャパシティビルディングを促進し、仲介することを目的とし、同時に、DSIの利用に関わる多種多様な関係者の間に対話の場を提供し、関係者のニーズにより効果的な対応を行うことを目指していることをコメントした。

バイバーシティーの マイケル・ヘイルウッドは、オプション3.1のバリエーションとして、利用国の企業の商業活動に応じての支払いを主張。オープン性を防がないこと、ユーザーの追跡調査をしないこと、などの利点がある。このアプローチは予測可能な収入の流れが生まれ、生物多様性の保全、持続的な開発に結びつけることができる。しかし、このオプションが受け入れないことも理解し、一歩下がって効率的に法的な確実性をもった取引量の少ないアプローチをもう一度検討する時が来た、そうでなければ、オプション3.1を主張したい、これは、ITPGRの加入システムとよく似ているとコメントした。

フランス国立持続可能性研究機関のジーン・ルイス・ファームは、独立した枠組みが増えることは進歩とは言い難い、データーは生物資源であることは以前から言われていた、そしてオープンにする必要がある、と主張した。


地球研 小林邦彦氏は、いくつかのコメントで法的性質の言及があったこと、ITPGRFAの下のMLSの強化の交渉は、法的専門家グループの会議で行われ、法律専門家グループは、条約の改正でなく、運営組織の決議に基づいて実施できると結論づけたこと、現行の枠組みを法的に議論することなくそのような変革を進めることができるか手続き上の疑問が残る、とコメントした。


参照

1)CBD DSI Webinar

https://www.cbd.int/dsi-gr/forum.shtml?threadid=2046

2)オンラインディスカッションフォーラム

https://www.cbd.int/dsi-gr/forum.shtml

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