見出し画像

いくらを4つ集めて消す話

わたしは距離感をつかむのが苦手である。

一日に何度も足の小指を棚にぶつけるし、2日に1度妻の足を踏んでしまう。大切にしようと近づくと、相手を傷つけてしまうのだ。
「お嬢さん、お逃げなさい。」とは、
森のくまさんと、距離感がつかめない悲しい男のためにあるセリフである。

そしてもうひとつ。
距離感がつかめないわたしは頻繁に、食器をこわす。お皿を洗う際、パッ、パッと手首を利かせてお皿の水をきる。そのとき、どこかしらに皿が(勝手に)ぶつかって割れるのだ。

そんな事案があるたびに、我ながら"サイコパスな殺人鬼"を想像してしまう。「ほら、おいで。殺す前に体をあらってやろう。」

ーーー

「週末だし、今日はおれが料理するよ。」

意気込んだわたしとは対照に、妻は無言のまま頷いた。彼女は今ぷよぷよに没頭してる。

さてと。わたしは「いくら丼」の用意をはじめた。
コロナ支援でお得に購入したいくらの醤油漬けを昼頃から自然解凍させていた。あとはお米を炊くだけだった。

画像5

昔、台湾で手に入れた小さな180mlのコップ。1合のお米を測るのにちょうどよく重宝していたコップを手にとって米袋に手をいれたとき、(パリーン)とこもった音が鳴り響いた。

今日は米袋の底が浅かった。昨日までもっと深かったのに、今日だけ浅かった。米袋の中で割れたコップは、破片となって無数の米の中に混ざった。

妻はぷよぷよをしていて事件に気づいていない。

画像1


バレてないので、ひっそりと一人で解決をすることにする。
米袋をひっくり返し、すべてのお米の精密検査。ひとつまみずつ目視と手ざわりで、異物混入がないかを確認。

画像6

1時間の確認作業と、20分の早炊き炊飯を経て、いくら丼ができた。
大丈夫、ぷよぷよのおかげで、妻は一連の騒動に気づいていない。

スクリーンショット 2021-01-24 17.07.24

「いくらばめっちゃたくさんある、うれしいー。」と妻。
どうぞ、たくさん食べてください。


「これだけあったら、すごい連鎖できそうだね。いや、全消しになっちゃうかな。いただきます。」

画像4

画像4



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?