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回顧録 vol.1

漆塗り職人になる

僕の父親が仏壇の漆塗り職人で、工房は自宅にありました。
そのため、子供の頃から父親が漆塗りをする姿を見ていました。

子供の頃からなんとなく「跡を継ぐんだろうなぁ」とは思っていました。

ただ、父親からは一度も「やれ」とも「やるな」とも言われたことはありませんでした。

当時、跡を継ぐ人は、高校を卒業後、同業者の元で3〜5年修行し、自分のところに戻るのが一般的。

高校を卒業する時「どうする?」と聞かれたけど、
今すぐ漆塗り職人になるか大学へ行くかを決めあぐねていたら、

「好きにしたらいいぞ」

その言葉に甘えて大学へ。

入った学部は、工学部電子工学科。
今にして思えば、もう少し漆に関連するところへ行っておけばや買ったのかもと思うけど、当時はあまり深く考えてなかったな(笑)

僕が“漆”を見て、美しい…と強烈に感じた一番最初は、大学3年就職活動をするか家業を継ぐか迷った時


就職活動が始まる頃、家業を継ぐのか継がないのかをいよいよ決めないといけなくなり、下宿先から家に帰って工房へ。

誰もいない工房に、父親が漆を塗った仏壇の胴板(本体横の板状のもの・横60センチ高さ120センチぐらい)が立てかけたありました。
日が傾きかけ夕方の光に包まれた静かな仕事場の中、そこ立てかけられ佇むその漆の美しさ。
その漆を見た瞬間、僕の中のスイッチがバチン!と音を立て、漆をやることを決めました。

平成3年の出来事でした。

その時までは、漆は「黒くてピカピカしたもの」ぐらいの認識しかなかったんですよね。

あの時の強烈な映像は30年近く経った今でも、鮮明で強烈に頭の中に心の中に残っています。


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