金持ちの気持ちはわからないけど

先日、祖父が亡くなり遺産相続について親戚とモメているという風なポストをXで見かけた。

ワシには金持ちの家の悩みなんてクソほどにも想像できないので「相続なんて無縁だな」なんて思いながらポストを眺めていたんだけど、ふと二十数年前のことを思い出してしまった。

あれはワシが三十路になったばかりのこと。

ある信用金庫から「筆頭相続人しぶちん様」と書かれた手紙が届いた。

その内容は、要約すると「あなたの亡くなった父親に年金を担保に金を貸していたので、代わりに返せ」という督促だった。

父親が亡くなったのはこの督促状で知った。ワシが30歳ということは、父親は還暦になる歳だ。

母親が家を出て行った直後に父親も家を飛び出し、それから音信不通。どこで何をしているのか全くわからない状態が少なくとも十数年だった。

それがよ、突然借金の督促状だけがワシの元に届いたんだ。

督促状を送ってきた金融機関が、当時ワシが住んでいた町の隣町に本社がある信用金庫で、音信不通の父親が意外と近くにいたことに驚きはしたが、

「子どもだったワシと年老いたバアさんを田舎に放置して行方をくらましたヤツの借金をなぜワシが肩代わりしなきゃならんのよ」という怒りが大きく、督促状はその場で燃やした。

もちろん、借金は財産の一部であり負債も相続の対象になることを知ってはいたけど、法的云々以前にワシには借金を肩代わりする義理がどうしても見つからなかったので、しばらく放置することにした。

年金を担保に金を借りていたっつうのに60歳で死んだのなら、返済なんておそらく一度もしてなかっただろうけど、そんなもんワシの知ったことかよ。

あれから二十数年経ち、追加の督促が一度も来ないところを見ると、もしかしたら「筆頭相続人」であるワシと面識のない相続人が他にいたのかも知れんな。

全く以てケシカラン出来事(貧乏家庭あるある)を思い出したもんだ。