かっこいい振る舞い

ワシは十数年前にとある病気に罹り、手術と1ヶ月の入院、その後、4ヶ月ほどの療養をした経験があります。病気に関しては、今日のエントリーの本題ではないし、説明がめんどくさいのでここでは割愛します。

Xのフォロワーさんにはご存知の方もおられるかもしれませんが、ワシには身寄りがありません。なので、入院や手術の手続きが面倒なのはもちろんのこと、退院後の生活にも苦労しました。命に関わる病気だし、手術すれば絶対に治るという保障もなかったし、退院後にそんなワシの世話をさせるわけにはいかんだろ、ということで、当時「付き合っていたわけではないが、ちょっといい感じだった彼女」とは距離を置たため、独りの入院、療養という事態に相成りました。

その「彼女のようで彼女じゃない」彼女がそばにいれば、ワシが寝たきりでも何かしらのサポートをしてくれたんだと思いますが、ワシが何もしてやれないのに一方的に世話にだけなる、というのも釈然としないし、自分の身体に無頓着だったため、生命保険などにも一切加入せず、貯金なんて考えたこともなかったので、手術代を含む医療費や、その後の生活、「万が一」のことを考えると「こういう男に関わってはならんぞ」という思いが出てきて、39歳のワシは、最後の婚期を逃したのであります。はい。

結局、病気を診てくれている病院の勧めで区役所へ駆け込み、医療費は全て無料、「その時」にはちゃんと葬式も出してくれる生活保護の申請をすることに。その頃のワシはフリーで仕事をしていましたが、生活保護を受けるために金目のものは全て処分しました。手放しても鉄クズにしかならないボロいハイエースと、ビッグスクーターの名車フュージョン、PCにFAXにコピー機、仕事で使う工具類も全て処分しました。おかげさまで、部屋の中にはテレビと冷蔵庫とエアコンとせんべい布団だけが残りました。こんな状態なので、そもそも「彼女」どころの騒ぎじゃありませんわな。自業自得ですわ。

死ぬかもしれんという「お先真っ暗」状態で何もかもをなくし、自分の生活力の無さに悔しいやら情けないやらと打ちひしがれている中で、唯一の救いだったのが、区役所の担当者の方の「しぶちんさんは、税金の滞納もないし、健康保険も年金もきちんと納めていますからね、そうやって真面目に働いてきた人がピンチになった時にこそ、生活保護は役立てていただきたいんです。」という非常にありがたい言葉でした。身寄りのないワシは、思わずグラッときましたね。当時40代半ばと思われる美熟女の担当者さん、あの時はお世話になりました。結婚してください!

ちょっと話が逸れました。

出迎えのない退院をして、すっからかんになった自室に戻った独り者のワシは、数ヶ月に及ぶ自宅療養を始めることになりました。退院後の生活は全部が大変でした。入院中の診察は、術後2週間くらいは車椅子での移動、歩けるようになってからも点滴のガラガラを押しながら、という状況だったので、階段の昇り降りもしない、便所と買い物と洗濯以外はほぼベッドの上だったし、腹いっぱいメシを食うこともないので、体重は入院前より10kg落ち、退院したとはいえ、身体が良くなったんだか悪くなったんだかわからない感覚でした。

さて、自宅療養が始まりました。生活保護を受給しているため、入院前のように湯水の如く浪費するわけにもいかなくなったし、服用している薬の関係で食べられるものに制限があったので、自ずと自炊することになります。体力が著しく低下した状態での買い物は、まるで冒険です。入院前なら30分程度で済んでいた近所のスーパーでの買い物も、退院直後では1時間半かかりました。歩く速度が3倍になった感じです。買い物から帰宅したら、あまりの疲労にソッコーで横になってしまうほどです。食材を買いに行ったのに疲れてメシが作れない、というコントですね。

闘病するにあたり、入院前に靖国神社へお参りに行ったのですが、退院1週間後に、再びお参りすることにしました。そこで自宅の最寄駅から電車に乗ったのですが、都内へ向かう上り電車は空いていたので難なく着席できました。

参拝の後、都内から横浜へ戻る際の下り電車は帰宅ラッシュで、空いてる席がなかったのですが「立ってるだけなら大丈夫だろ」とタカを括っていたのが禍いしてか、ちょっと気分が悪くなったんです。目の前が真っ白になって,思わずその場にヘタり込んでしまったんですね。たまたま優先席の脇にある手摺に掴まってはいたんですが、座り込んでしまったワシに声を掛けてくれる人はなく、周りの人たちも、如何にも迷惑そうな表情をしていたこともあって、吹き出す脂汗を拭いながら次の駅で降りることにしました。体重を10kg落としたとはいえ、入院前のワシを知らない人にとっては、貫禄のある怖い顔したオッサンが酔っ払って座り込んでる、くらいにしか見えなかったのでしょう。

介助者がいないのに、体調を考慮せず無理をした自分が悪いのは重々承知していますが、あれだけ人が乗っているのに、ああいう状況で誰にも声を掛けられないなんて、むしろ奇跡に近い経験でした。そんなことから、障害を持っている人、妊婦さん、小さな子どもを連れた人、怪我をした人、見た目は元気そうだけど実はそうじゃない人たちも、周りの人たちに迷惑掛けてるかもな、と思いながら、様々な事情で公共の交通機関を使っているのかもしれない、と思いました。

ワシは、作業用の車を手放し、今では自家用車も持たないので、自宅療養が終わってからの通勤や外出は、専ら公共の交通機関を使うようになりましたが、そういう経験から、優先席の重要性を身を以て知っています。なので、小原ブラスさんのような「かっこいい」振る舞いを心掛けています。見た目はかっこよくない初老のオッサンです。


小原ブラス 優先席に座っていたことを説明「暑すぎて…空いてたし」即座に取った行動に称賛の声

https://news.yahoo.co.jp/articles/794d7dfa51f4d163c178c17ce83909ca018dc807

 タレントの小原ブラス(32)が、24日までに自身のX(旧ツイッター)を更新。電車で優先席に座っていたことについてつづった。

 ネット上で投稿された、“電車で乗り合わせたサングラスをかけた金髪外国人男性が、優先席に座った。かっこよくて見ていたら、すぐに女性に席を譲った。よく見ると、女性は妊婦で、男性は小原ブラスだった”という旨のポスト。小原はこれに反応し、優先席に座ったことについて説明。

 小原は「暑すぎて優先席空いてたし座ったのよ」とし、「優先席、若者は座るなって人もいるかもしれないけど、私は譲るなら座っていい派」と自身の考えを記した。「その代わりマタニティーマークやら付けてる人いないか、必要そうな人がいないか周囲に注意して寝るなよとは思う」とつづった。

 投稿には「模範的な行動な気がしますね」「ステキな行動~」「あくまで優先席であって、専用席ではないですからね!」「この暑さだとフラフラになるよね」「中身も外見もステキなブラちゃん」「ブラスくんはいつだって優しいな」「できる男過ぎるw」などの声が寄せられている。