「政権交代前夜」の再来か

前回のエントリーで政治の話をしたので、ついでと言ってはナンですが今回も少し。

〝ブーメランの女王〟の出身母体である立憲民主党ですが、分不相応にも再び政権交代を夢見ているようです。国会での質疑や討論番組などで、民主党政権時の失政や不始末を責められると「もう済んだこと」「民主党はもう存在しない」などといい、数少ない功績を語るときには「我々がやったんです!」などと恥ずかしげもなく胸を張ってみせますが、自らの都合に合わせて過去をなかったことにしたり自画自賛したりするところをみる限り、あの政権運営の失敗からは何も学んでいないようです。

自民党や政府には、些細なことですら執拗に反省を求め、大臣の辞任要求までするくせに、自らはまったく反省しない。おそらく、共産党や社民党とともにマスコミに過度に甘やかされているせいで何を反省すべきかわからない、もしくは「反省する」という機能自体が備わっていないのかもしれません。彼らは、3年あまりで終わってしまった政権運営の総括もロクにしておらず、懲りもせずにあのときと同じ手口で政権奪還のタイミングを計っているんです。どこまでも反省しない人たちですね。

今から15年くらい前になりますか。小泉政権のあと、安倍・福田両政権が1年ずつで倒れ、満身創痍の自民党を支えていたのが麻生太郎総理総裁でした。

当時はリーマンショックに端を発する世界的な金融危機によって各国が苦しみに喘いでいて、当然、日本も例外ではありませんでした。そんな中、麻生政権は日本経済の立て直しと国民生活の向上を第一の目標に掲げ、あらゆる対策を打ち立てていきます(詳細については各自ググってください)。ところが、安倍・福田を倒して気をよくしていた野党第一党の民主党は、この国難とも言える状況下でも、政府に協力するどころか、政局を持ち出して政権の足を引っ張り、審議の妨害とも取れる愚行を繰り返していました。

世界的な大恐慌の中でも比較的傷の浅かった日本は、G7(先進7ヶ国財務相・中央銀行総裁会議)において、新興国や中小国向けの新たな緊急融資制度を設ける旨を発表し、IMF(国際通貨基金)に1000億ドル(約9兆2000億円)の拠出を提案しました。実際、この制度で救われた国は多く、のちに各国から「人類史上、最大の貢献だ」と称賛され、日本が保有する米国債を活用することで実質の負担なしに利益だけ得られるような仕組みを作った功労者が、ワシが尊敬してやまない中川昭一財務・金融相でありました。

2009年2月、その合意文書に署名したことを発表する記者会見が、人類史上最大の偉業を陰に追いやってしまいます。そう、中川大臣による朦朧会見ですね。酒にまつわるエピソードに事欠かない中川氏でしたが、やはりあの状態では飲酒を疑われてしまいました。マスコミは挙って「泥酔会見」などと騒ぎたて、中にはG7に参加していた海外の要人に、会議の中身ではなく中川氏の会見について質問する恥知らずな日本人記者もいたといいます。

中川氏は、風邪薬と睡眠薬の飲み合わせが悪かったと釈明したものの、それを真に受けるマスコミは皆無で、結局、G7に出席した各国首脳などの証言により飲酒の疑いは晴れましたが、それを大きく扱う報道はありませんでした。飲酒の疑いが晴れたにも関わらず、日本ではこの救世主を拍手で出迎えることも、その偉業を労うこともなく、民主党とマスコミが一体となって、帰国した中川氏へバッシングを繰り返していました。ニュース番組では連日、朦朧会見の様子が垂れ流され、雑誌を開けば「泥酔」「酩酊」の文字が踊り、国会では民主党が「中川大臣が辞任するまでは審議に応じない」と審議を人質にして春休みを満喫し、喫緊の課題に取り組む政府への嫌がらせともいえる妨害を続けていました。まさに民主党とマスコミによる総攻撃です。

確かにあの会見は褒められたものじゃありません。今さら「もしも」の話をしても仕方がないけれど、薬の飲み合せなら時間を調整して服用すればよかったし、体調を考慮して別の機会に改めて会見を開くこともできたはずです。民主党やマスコミが言うような泥酔ではありません。ちょっとしたミスが招いた体調不良というだけの話です。むしろ、世界的な金融危機にあり、財務省の長としての激務の中で海外へ飛び、諸外国が絶賛するような仕事をしてくれたこと、会見の途中で朦朧としてしまうほどの大仕事を成し遂げたことは大いに称賛されるべきでした。

マスコミの力というのは実に怖いもので、連日繰り返される中川氏へのバッシングや誹謗中傷は、やがて自民党の議員や支持者までをも反自民に駆り立ててしまいます。中川氏は「これ以上、国会の審議を止めるわけにいかない」として財務相を辞任しますが、あろうことか、今度は自民党内から麻生おろしの声が聞こえ始めるのです。まさに民主党やマスコミの思う壺。自民党は自ら破滅の道を突き進んでいくのです。

さて、そろそろお気づきの方がいるかも知れません。この立憲民主党(+マスコミ)による反政府運動の手口は、本当に今でも変わっていません。政策論争では五分に戦えないので、相手のミスを探して突っつき、発言の一部を切り取って「失言」を作り、新人議員を追い回しては「仕事をしていない!議員失格!」と罵り、首相や閣僚が高級レストランやバーで飲食をしていたと聞けば「炊き出しに並んでいるホームレスのことも考えろ」と憤ってみせる。支持者の一部でしかなかった旧統一教会と議員の関係が、いつの間にか自民党がカルトに乗っ取られたいうことになり、記載漏れだったはずの「裏金」が、いつの間にか脱税ということになり、いつの間にか「裏金議員は犯罪者だ!逮捕しろ!検察は仕事しろ!」ということになり、国会での審議もこうした話題で持ちきりとなり、マスコミも便乗して狂喜乱舞の大騒ぎをしている。安倍氏の「モリカケ桜」も同類でしたね。

国会は1日開けば約2億円の経費が掛かると言われています。質問者の通告を受ければ、担当の官僚が限られた時間の中で、関連する大量の資料を読み漁り、大臣の答弁を作成します。15年前から相も変わらず方々で悪質な官僚イジメを続けている立憲民主党の議員たちは、多額の経費が掛かる国会と、夜を徹して働く官僚の労力を、政局で無駄遣いしています。

そして、保守も15年前と変わっていません。15年前は、民主党による政権交代が現実味を帯びてきてもなお、自民党内から麻生おろしの動きが出ました。当時は「あの人たちには自分で選んだ総裁を何が何でも守ってやるっていう気概はないのか?」なんて思ったりもしましたが、今でも「岸田おろし」を叫ぶ自民党支持者が大勢いますし、自民党の外で保守の票を割るような動きをしている人たちもいます。政治が安定しているときにはそれでもいいのでしょうが、選挙が近くなり、反自民の攻勢が増しつつある段階でこの体たらくでは、悪夢の民主党政権の再来も現実のものとなるかも知れません。「別にそれでもいいや」と思う人にはどうでもいい話でしょうが、「自民党にお灸を据える」「一度でいいからやらせてください」という文句に騙された有権者が民主党にやらせてみた結果、悪夢が来たことを思い出してください。立憲民主党は民主党が看板を掛け替えただけで何も変わってない、むしろ、民主党内の保守派が抜け、共産党と組むことによって反民主主義・革命指向の度合いが増しているのです。

中川氏は、財務相を辞任した数ヶ月後に行われた総選挙で落選しました。落選の原因はあの「朦朧会見」で間違いないでしょう。しかし「朦朧」は飲酒が原因ではなかった。本来ならば大臣として最後の大仕事を絶賛されるべき人でした。そして2009年10月3日、誰に看取られることなく自宅の自室でひっそりとこの世を去りました。56歳没。衆議院議員8期26年に渡り農政、経済、財務、金融、外交安全保障、教育と幅広い分野で確たる国家観と信条を持って遺憾無くその能力を発揮されました。もし存命であれば、間違いなく総理大臣になっていたことでしょう。大事なことなのでもう一度言いますが、あの会見は断じて泥酔ではなかった。誰が中川昭一を亡き者にしたのか、思い出すと今でも怒りが込み上げてきます。今ごろはあっちで仲がよかった安倍ちゃんと、大いに政治談義で盛り上がっていることでしょう。ワシもそっちへ行ったら混ぜてください。

ワシは積極的に自民党を支持する者ではありませんが、悪夢の民主党政権の再来は勘弁してもらいたいですね。東京都知事選に〝ブーメランの女王〟が当選するようなら、いよいよヤバいと思いますよ。