見出し画像

インサイドセールスの前にやるべきことをやれ!

「最近、機構改革=インサイドセールス推進部などの人事・組織改革に関するニュースをよく見るようになりましたが、インサイドセールスと言われても今ひとつピンときません。どのようなのもで、どのように対応していけばよいかアドバイスをいただけませんでしょうか?」──機械製造業の60代経営者の方からのご相談です。

確かに、新聞の人事面でも機構改革でインサイドセールス部門が新設されたりする例が散見されます。また、非接触での営業対応やリモートワークの活用など要請から、インサイドセールスが注目されているのが現状です。

残念なことは、インサイドセールスの内容をきちんと理解せずに、インサイドセールスだけをやれば、全て上手くいくと勘違いしている経営者の方が多いことです。

まずは、従来型の営業とインサイドセールスの違いを確認しましょう。
見込み客を訪問し、直接の対話を通じて商品・サービスを提案し、商談を進めて受注へとつなげる従来型の営業をフィールドセールスと呼びます。

これに対して、見込み客に対して電話、電子メール、ダイレクトメール(DM)、チャットなどでコミュニケーションを取り、ニーズを探りつつ関係を構築する営業をインサイドセールスと呼び、国土が広大な米国で発達しました

もともと、米国でも従来型のフィールドセールスが主流でした。見込み客(=リード)の獲得から契約までを営業が対応していましたが、営業が商品・サービスを持参してまだ商品・サービスの存在さえ知らない顧客を求めて米国中を飛び回るのはあまりに効率が悪いということで、見込み客(=リード)の獲得という役割をマーケティングが担うようになりました。

その後、マーケティングが持ってきた見込み客(=リード)の確度・精度が悪い、商談に結びつかないとフィールドセールスの営業が文句を言うようになり・・・この解決策として、マーケティングとフィールドセールスの営業の間にインサイドセールスという役割が追加され、見込み客(=リード)を商談につなげるように商品・サービスの有効性を知らせ、顧客の興味を喚起する役割を担うようになります。

こうして、見込み客収集(=リード作り)をマーケティングが、見込み客育成(=リード育成)・商談作りをインサイドセールスが、提案や契約(クロージング)をフィールドセールスが担うという分業体制がつくられるようになりました。

<従来型セールスとインサイドセールスの流れ>
 ・従来型セールス  
  「営業(→保守・アフターサービス)」

 ・インサイドセールス
  「マーケティング→インサイドセールス→フィールドセールス(→カスタマーサクセス)」

わかりやすく図解するとこんな感じになります。

【図1】


図1にあるように、従来の営業が一人で担当していた①見込み客獲得、②見込み客育成、③契約、をそれぞれマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスに細分化して、分業体制を確立することになります。

細分化・分業体制とすることにより、従来型セールスと比較して、大幅に効率化を図ることができます。

以前のコラム(第30話:経営者を悩ます新規営業部隊の存在・・・)でも「新規先獲得の仕組みが社内にできていれば、新規営業部隊は不要」と申し上げましたが、このインサイドセールスの営業の流れを、新規先獲得の仕組みとして社内に構築すれば営業部隊は不要です。

営業で叩き上げの経営者の方であれば、説明するまでもありませんが・・・
経営者であるあなたが、仮に新規営業担当者だと想定してみてください。

毎朝、上司から「今日は何件アプローチするの?」、
「関係構築できて、商談に入れる見込先は何社?」、
「まだ、契約獲得先がないけど、今月は目標クリア大丈夫?」などと言われたら、1日の時間配分をどうされますか?

表向きは、「はい。今日は20件アプローチします。」、
「商談に入れそうな先は2社です(汗)」、
「今月の目標必達に向けて頑張ります!」と言うでしょうが・・・

本心では、「うるせー(怒)」、
「いろいろ考えてやってるよ!」、
「1人で見込先獲得、育成、契約まで全てやってるんだぞ、ある程度浮き沈みがあっても仕方ないだろ・・・」となっていてもおかしくありません。

日本の企業は大企業であろうが、中小企業であろうが、営業の仕組みをつくるのがうまくありません。正直な感想を申し上げると、「根性論・精神論ばかりで、仕組みづくりを軽視している」としか思えません。インサイドセールスをウンヌンする前に、「営業の仕組みづくり」を本気で実践していただきたい。

営業の仕組みが社内にできているというのは、誰でも新規営業を担うことができるように活動内容について標準化・マニュアル化されている状態です。つまり、今年入社した新人でも十分に新規先獲得にかかる営業を担うことができ、新規営業(マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス)とそれ以外の仕事を交代できる社内体制が確立されている状態であり、分業された新規営業の一部を担うことになるのです。

営業の仕組みづくりができていると、毎朝の上司の声がけも、
(従業員がマーケティングの場合)
「今日は10件の見込み先(=リード)を獲得できるまで頑張ろう」、
(従業員がインサイドセールスの場合)
「今日は関係構築できて、商談に入れる見込先を2件育成できるまで頑張ろう」、
(従業員がフィールドセールスの場合)
「まだ、契約獲得先がないけど、今月の目標をクリアするために、契約見込先1社に対してクロージング仕掛けよう」という感じで指示が明確かつ具体的になります。

営業の仕組みづくりが整うことで、上司からの指示が明確かつ具体的になりますので、先程の「本心では・・・」という負の感情を持つことは大幅に減るはずです。

こう申し上げると、そんなに上手くいくわけないよとおっしゃる経営者の方が多いのですが・・・
不思議なことに、製造業では、資材の調達、製造ラインの管理、人員配置、在庫管理、品質チェック、などの細分化・分業体制がきちんと構築され、それぞれの最適化が当然のようになされていることです。それも世界トップレベルの水準で・・・

製造と営業という違いはありますが、マーケティングという川上から、見込み客をきちんと管理し、その育成状況に応じて、契約・クロージングの川下へと引き渡すというプロセスと同じだと思います。製造ラインで出来て、営業現場で出来ないことはないと思いますが、いかがでしょうか?

ご注意いただきたい点としては、製造ラインと同じように、それぞれマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスを担う従業員の人事評価もきちんと見直していただきたい。営業で成果主義を採用している場合などは、トップクラスの営業がノウハウを開示せずに、独り占めしてしまい、ブラックボックスが残ってしまい仕組みづくりができませんので・・・

製造業で当たり前のようにできている細分化・分業体制と同じように、営業のプロセスややるべきこと、そして人事評価を明確にしさえすれば、十分に対応できるはずです。そして、営業の細分化・分業体制の構築ができれば、①見込み客獲得から②見込み客育成に移行する確立(例示で20%)、②見込み客育成から③契約に移行する確立(例示で10%)がわかります。

上記例示で仮定すると、今期50件の③契約が目標であれば、②見込み客の育成は500社、①見込み客の獲得は2,500社必要となることが算出できますので、それをベースに各部門(マーケティング→インサイドセールス→フィールドセールス)の目標値を決定することが可能となります。

確立による目標値の算出が、あなたの会社に定着すると、次のような効果がありますので非常に経営がやりやすくなります。
・営業のブラックボックスがなくなり、だれでも同様の営業結果を出せるようになる。
 (営業マニュアルの作成・改訂による)
・新人や中途入社でも営業可能となるので、スーパー営業マンは不要。
 (「ウチに優秀な営業マンが来てくれれば・・・」という幻想を抱く必要なし)
・途中で目標未達の場合、どれだけ活動すればいいのか周知徹底が簡単。
 (足りない数字から逆算して、各部署に対応依頼)

これまで見てきたように、インサイドセールスに着手する際には、インサイドセールスが営業の細分化・分業体制の構築であることをご認識いただき、人事評価も踏まえた「営業の仕組みづくり」を本気で実践していただきたいと思います。

経営者であるあなたが「営業の仕組みづくり」に本気で動き出せば、社内営業体制のマニュアル化・効率化が進むとともに、確率による目標値の算出もできるようになるのです。

このように混沌とした時代だからこそ、経営者であるあなたがリーダーシップを発揮して、営業部門の活性化と会社の繁栄につなげてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?