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じぶん物語vol.2〜満天の星空〜

夜のお祝いにむけて
せっせと準備
お赤飯とか、なんとか。
普段は作らないようなものばかりで
早めに準備して、出来をたしかめたり
ちょっと盛り付けを豪華にするから
早めはやめに。

約100人分の料理。

揚げ物もいろんな種類があるから
早めに揚げ油のはいった、フライヤーの火を点火した。

その数分後、
急に地面がおおきく揺れた。

一瞬なにがおきたのか
わからなかったけれど、
もう、ダメかも。

そんなことが頭によぎった。
立っていられず、思わずしゃがむ。

フライヤーの油がたっぷたっぷ揺れた。
とっさに近くにいた調理師さんが
火を消してくれた。

もう、大丈夫かな。そうおもって
立ち上がるとまた、おおきく揺れ始めた。

揺れがおさまり、
火をつけたばっかりでよかったね。と
はなしたり、
とりあえず家族に連絡したほうがいいよ。やなんや。

もうダメかも?とおもったわりに
わたしは
そんな大したことないかな?と
夜は普通に行われるかな?とかおもっていたけれど
そうでもなさそうだ。

みんな家族に連絡してみるも
メールが送れない。
とりあえず、外に避難しよう。


外にでると
先生たちや子どもたちがすでに
集まっていた。

ひとりのコが
ラジオをもっていて
津波がどうの。というはなしをしている。

....津波??

もうなにがなんだか
なにがおきているのか、よくわからなかった。

電気、ガスも水道もとまってしまっていて
夜のお祝いの会はもちろん中止。

事前に試し炊きしていた
お赤飯が公をそうして、
それをおむすびにする。

たしか、
防災用の水でお米がごはんになる
炊き込みごはんもおむすびに。

子どもたち、先生たちは
体育館で夜をすごすことに。

普段、調理師は
泊まり業務なんてないのだけれど
泊まったほうがいいかな?と
声をかけるも、帰っていいよ。といわれる。

家族と連絡もとれなかったけれど
おそらく、大丈夫だろう。

車で家への道を走る。

道はほとんど
人も車もいなくって
ガランとしていて不思議な景色だった。

せかいから
人がいなくなってしまったような。

電気もとまっているので
信号はもちろんついていない。

交差点はゆっくり
左右をみて気をつけようとするけれど
そんな意味もないくらいに、車がほんとうに走っていない。

家のある
住宅街も、あかりがなくて
家がみえても、もちろんあかりはついていなかった。

家につき
玄関を、あける。

おかえり!

母の声がした。
父も妹も犬も無事だったようで
みんな、きょうはリビングで布団をしいて
寝ていた。

公務員だった
父は一度帰ってきて
翌日親父仲間とするはずだった
マラソンの打ち上げのために買っていた
おでん用の練り物をおいて(これがかなり、重宝した笑)
また、職場へと出掛けていったらしい。

かっこいいな。とおもいつつ
男の人がいない。というのは
なんだか、心なしか不安がじぶんのなかに
広がったのがわかった。

帰り道
いつもの坂の下り道で
ふと、フロントガラスから
空をみあげた。

そこには

満天の星空があった。

パアっと、しずかに
わたしのなかのなにかが、動いた。

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