隠れオタクの婚活奮闘記1

自分は、田舎在住のいわゆる「隠れオタク」。

家族や周りには一切オタクだということを公表(?)していない。

特に「いや、自分、オタクだからさ〜!」なんて言う機会もなかったし、外で「あのアニメめちゃくちゃ良かった~!」と話す相手も居なかったし、「あ〜〜今日も推しが生きてるだけで幸せ〜〜!!!」なんて言葉を日常生活内で発するタイミングもなかっただけで。(心の中では毎日推しの幸せ願ってたけど、それを語れる仲間がいなかった)

隠しとおそうと思ってたわけでもないけど、ここまで隠し通せてしまった…そんな隠れオタク。

ここまで来ると今更「実はオタクなんだ…」なんて言う相手も居なくて(誰も自分のことなんぞ興味ないだろ)、気づけばアラサーになっていた。

まわりの友人たちは着々と結婚をしていく。

田舎在住だからこそ感じる「あの子いつまで実家に暮らしてるんやろ?」というご近所さんの声なき噂話。

高校卒業してからずっと真面目に働いてきた。

就職先で「うお〜、先月まで高校生?!若ッ」とからかわれつつ「なぁ、営業部の◎◎くん、どう思う?!」と謎に男の人を進められて以来、仕事場で恋バナ的なものをされるのが苦手になった。

何でこの人たちは社内の人間同士をくっつけたがるのか?と気持ち悪くて仕方なかった。

別になんとも思ってなかった営業部の◎◎さんは、周りからからかわれるのが嫌なんだろうな〜というのが見え見えだった。かわいそうになぁ、◎◎さんも若手だから好奇心旺盛なおじさん先輩たちの(よくわからんアホみたいな妄想)恋バナに付き合うのめんどくさいだろうな~。……と思っていた。

淡々と仕事はしていたけど、その◎◎さんがやたらとこちらを気にかけてくるのが目に見えて分かり始めた時があった。

「あ、なんかコレ気持ち悪いな」と心の奥底で感じた。

周りに感化されやすい人だったのだろうか、自分のことを気に入り始めてくれていたのである……

仕事的にやり取りするのは仕方ないけど、そこに色恋沙汰を入れてくる人が自分は苦手だ。

仕事中なんだからしっかり仕事に集中せぇよ、と謎に苛つく。

当時の勤め先は制服が決まっていて、女性は体型が分かるようなタイトなスカート(膝くらいまでの長さだったけど)だったのも、当時18〜19歳くらいの自分には「気持ち悪い」と感じる一つの要因だった。 

結局体調を崩した私は、その職場を去ることにし、次は男性がいない職場にするぞ…!と女性が多い職を選択してきた。

女性が多い職場は、いわゆる女の園みたいないざこざがあるのではないか?と心配はしたものの、異性からの好奇の目を避けられるのでとても過ごしやすかった。

20歳の頃、成り行きで彼氏ができた。

そこまで好きでもなかったけど、「付き合う?」と言われた時に雑音が多すぎて聞こえてなくて「はい?」と聞き直したらそれがイエスと捉えられたようだった。

なんやしらんけど相手喜んでるし、周りも盛り上がってて「はぁ?」となってる自分をよそに、有耶無耶なまま付き合うことになってしまった。

思えばこのときにはっきりと「いや、付き合わないですよ」と断ればよかった。

この男性は私のことを本気で好きでいてくれたらしく、合うたびに結婚結婚と言ってきた。

今思えばなかなかのイケメンだったな〜とは思うのだが、当時の自分としては「なんやねんこいつ、かってに結婚とか言いよってに……こちとら好きでもなんでもないんですけど」というなんともアレなアレであった。

そんな自分には忘れられない大好きな人がいた。

学生時代からずっと大好きだった人。

某サッカー漫画の、u14選手、W菜Y人くんである。

念の為伏せ字で書いているが、書きにくいのでこの先は「ゆーと」と書かせていただく。(伏せ字の意味とは)

ゆーとは、漫画の後半に出てきたキャラで、茶髪でおしゃれなボサボサ髪型(おしゃれなボサボサ???)で、顔立ちも可愛くて、

なんと!!

ボランチなのである!!!!!!

だいたい自分が好きになるキャラは、サッカー漫画では「中盤」、野球漫画で「外野」!!その自分的公式にドンピシャであった。

当時ガンバ大阪に所属されてたI本選手が大好きだったのですが(プレースタイルめちゃくちゃ大好き)、その憧れのI本選手になんとなく似ているような…、??というのがゆーとの第一印象だった。

のちのち作者様が「ゆーとのモデルはI本選手」と描かれていたのを見たとき「うぉっしゃあ〜〜〜!!!!そうだと思った!!そうだとおもった!!!あざます!!あざますHぐちせんせい!!!さすがですせんせい!!!!ついてきます!!!!」と布団の上にダイブしてゴロゴロのたうち回っていたこともありました。

そんな大好きなゆーとを忘れられずに、オタク女の私は想い続けていたのである。

ゆーとならこんな風にしないのにな…

ゆーとならあのときこう言うハズ…

と全てにおいて(まったく直接あった事もない)ゆーとを基準にして彼氏と比べていた。今思うと自分は

ゆーとガチ恋勢

だったんだな、と思う。

(たんなる妄想癖、現実逃避ともいう)

そんなこんなで当時付き合ってた彼氏が結婚という言葉を出せば出すほど、気持ちは冷めていく。

転職した先の仕事が楽しいと話す私に当時の彼氏は「結婚したらそこ辞めなアカンな」と言ったときに「は?なんで辞めなアカンの?」と言う会話が生まれ、この人は私に仕事を辞めさせて専業主婦になれというのか…!と気付き、とっとと別れようと心に決めた。

しかし、その別れ方がヤバいと自分でも思う。

とある日、出勤時に「早く別れなければ」と焦っていた私は会社につくまでに連絡を取ろう!と彼に電話。

朝から電話が来てごきげんな彼氏。

「どしたん?めずらしいやん電話くれるの」

「あ〜、うん、ごめん。実はずっと好きな人がいて忘れられないから私とは別れてほしい」

「へ?!」

「ごめん、学生時代から(ゆーとのこと)めっちゃ好きやって、やっぱり(ゆーとのこと)忘れられへんし、このままあなたと付き合ってるの申し訳ないから別れよう」

「誰なん、そんなに好きな人ホンマにおるん?」

「いるよ(ゆーとっていう二次元の人やけど)。ごめんな、ありがとう、では。」


……………みたいなやりとりをして、なんやかんやスッキリ別れられた自分は、清々しい気持ちで会社に出勤。

「おはようございます!今日も楽しく働きましょう〜!」とニッコニコの笑顔でご機嫌に働きました。

そうだよ、わたしはゆーとが好きなんだ!自分の気持ちに嘘をつくのはやめよう!二次元だろうがなんだろうが、私はずっとゆーとのことが大好きだった!彼が試合中に一生懸命プレイしてるところも、U14トリオで楽しそうに話しているときも、ユニフォーム姿もジャージ姿も制服姿もどんなときも!全部全部!大好き!!わたしはゆーと(またはゆーとのような人)としか恋愛できない!!!自分のこんな気持ちを再確認した私は、自分の恋愛基準を ゆーと に設定した。

思えばここからこじらせははじまっていた。

いや、もっと前……生まれたときからこじらせていたのかもしれないが、はっきりとこじらせを自覚しつつも「こんな自分が好きだわw」とむしろ楽しみ始めたのもこの頃からだった。


このあと、ズブズブとオタクの沼へ足を踏み入れることになる。

それは「コスプレ」というものとの出会いだった。

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