一首評:藤原建一「2022年4月23日 日経歌壇」掲載歌
誰もが感じるような不安と、神経症的な妄執、そして正常性バイアス……これらの間をそれこそ揺れ動くような短歌。
上の句で歌われる「風に揺れる巨大クレーン」は、もう存在そのものが多くの人に不安を呼び起こすようなものだ。加えて「クレーン」という音感自体が、中原中也の「ゆあーん ゆよーん」を例に出すまでもなく、揺れる感触をはらんでいて、さらに不安を煽る。
その上、その「真下」を「行く」となれば、圧倒的な巨大な建造物がのしかかるような心持ちで、不安は最高潮に達するだろう。
ここまで