カペラ(7)

 ~7~
 次の日、カペラを連れて、都姫ねえのうちに遊びに行った。
“ピンポーン”
 都姫ねえは、うちよりちょっと、はなれているマンションの10階に住んでいる。
「あれ? 瑠奈! いらっしゃい! 今ちょうどおそうじ終わったところで。さっ、あがって!」
 コポポポポ…
 都姫ねえはミルクティーをわたしに出しながら話をきいてくれた。
「へー、そんなことがあったんだ。」
「うん。」
 カチャン…
「はい、どうぞ。」
「ありがとう。」
 そして、都姫ねえは笑いながら、
「でも、その麻里花ちゃんのお母さんがいい人で良かったね。」
「うん。」
「でも、つくづく瑠奈ってすごいなって思うよ。小さいのにさ。で、その決めたことってなんなの?」
「あのね…大きくなったら、ぬっ、ぬいぐるみ屋さんになろうと思うの。ほら、幼稚園の時、言ってたじゃん。ちょっとこのごろ忘れてたけど。」
 わたしは都姫ねえが笑うと思ってた。やっぱりまだまだ瑠奈は子どもだね、って。
 でも、都姫ねえは、
「すごいっ、がんばれっ! この都姫ねえ、応援してあげるよ。」
って言ってくれた。
「笑わないの?」
「なんで? 笑うわけないでしょ。それぞれ人は夢持ってていいじゃない。はい、クッキー。」
「…ありがとう。」
「ん、聞こえないな?」
「ありがとう‼」
「うん、グッド!」
 それから、クッキーを食べていると、都姫ねえは横のいすにすわっているカペラを見て、
「そうだ、瑠奈、カペラの意味、知ってる?」
 わたしは、カペラの名前をふしぎな名前と思ったことはあったけど、意味まで考えたことがなかった。だから、
「知りだい、どうじでカベラっでいうの?」
「…口の中のクッキー、なくしてからしゃべりなよ。あのね。」
「うん!」
「カペラっていうのは、お父さんがつけたんだけど、外国の山の方で夕暮れになると虹色にかがやく星があったんだって。それがカペラ。」
「へー。」
 わたしは、おどろいた。
「でも、本当にお父さん、星、好きだね。」
「そうね。なんでもかんでも星の名前つけるんだから。」

 そのあと、家に帰って部屋にもどったら先に由恵ねえが帰ってきてた。
 まだ、おこってるかな
と、思って、かげから見ていたら、由恵ねえがわたしの出しっぱなしにしてあったぬいぐるみのうさぎのミミちゃんにつまづいて、転んだ。
 やっばー…
「いったた…まったく…」
と、由恵ねえはちょっとおこっていたけど、わたし、見たんだ。たなにミミちゃんをかたづける時、にっこり笑ったのを。
 ぬいぐるみ、キライになったわけじゃなかったんだ…
 そう思った時、由恵ねえがわたしに気づいた。
「あ、あんたいたの。」
「うん。」
「あーそっ。あ、ゴメンね、この前は。」
「うんっ。」

(つづく)

#小説

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