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#小説
別れの日は晴れた日がいいだろう 5
なんみょーほーれんげーきょー
…眠い。
お経って、なんて長いんだろう。というか、何語? なんて言っているのか全然訳がわからない。
部屋にたちこめる、お線香の香り。
響きわたる木魚の音。
じじいは立派な戒名をもらっていた。意味わからないけど。
何度も復唱するお経。すすり泣く人の声。
「黙祷をお願い致します。」
と、和尚さんに言われて、下を向いて、目を閉じた。途中で頭を上げてみた。
おばあちゃんはじじ
別れの日は晴れた日がいいだろう 2
そんなじじいにも、知り合いというものはいたんだな。七十七年という人生の間に。
ぞろぞろと告別式にやってくる、参列者の人達。
「まあ、田中さんにこんな大きいお孫さんいたの。」
あら、良かったわねぇ、と口々に言う、じじいの学生時代の級友のおばあさん達。
「何がいいんだろうね。」
明がぼそっ、と言った。
「さあね。」
お年寄りの言うことなんて、四捨五入して、二十代のあたし達になんてわかるわけないじゃない
別れの日は晴れた日がいいだろう 登場人物
あたし…じじい(田中俊春)の孫娘で明の姉
田中明(たなかあきら)…じじいの孫であたしの弟。
田中俊春(たなかとしはる)…じじい。あたしと明、美紀の祖父。
田中美紀(たなかみき)…じじいの外孫。あたしと明の従姉妹で正春叔父の娘。
田中俊之(たなかとしゆき)…あたしと明の父。俊春(じじい)の長男。
田中正春(たなかまさはる)…あたしと明の叔父。美紀の父。俊春の次男。
吉村嬉子(よしむらよし