憧れを追い続けて
憧れのサロン『火曜会』
大学生の頃から、タイムスリップしたい時代は?と問われると「マラルメの『火曜会』」と答えてきた。詩人ステファヌ・マラルメは19世紀フランスで文化人の集うサロンを催した。その場所はパリのローム通りで、私が4年間過ごした家ともほど近い。モネやマネ、ルノワール、ゴーギャン、ヴェルレーヌにジッド、オスカー・ワイルド、ドビュッシー…と錚々たるメンバーが集ったという。彼らはそれぞれの芸術文化のみならず社会情勢にも敏感で、「社会を生きる人間としての活動」を体現してきた人物たちでもある。そのような文化芸術家が刺激し合う空間に、大きな憧れを抱いてきた。私が今のように音楽畑の人間でなかったとしても、間違いなくこのサロンに行きついて、やはり憧れていたと思う。
戦後の『実験工房』
日本にも戦後、似たようなサークルがあった。詩人の瀧口修造が率いる『実験工房』だ。このグループもまた、浮世離れした集まりではなくて、実直に、そして鋭く社会を見据えた文化人の集いだった。「もっと、もっと思考しなくては」と心に迫る文章を書く評論家・秋山邦晴や、鮮やかな抽象画を描く山口勝弘、世界と渡り合った武満徹、ピアニストの園田高弘など…これまた錚々たる顔ぶれだ。彼らが戦後の「砂漠」となった日本で、「娯楽」と言われてポイ捨てされる「俗に言う文化芸術」を扱う人間が、いかにして社会に生きてゆくか―尚且つ、商業主義に走らずその立ち位置を確立し、社会に一石を投じてゆくことができるのか―熱い議論を交わし、前衛的でありながら存在感のある発信を続けた人たちである。その彼らが舞台に取り入れたのがオリヴィエ・メシアン、アーノルト・シェーンベルク、エリック・サティ、そして自分たちの新作だった。
憧れを追い求めるうちに、私もこのような人たちのやっていたことを再現してみたい…と思うようになっていた。知られていないものを取り上げることはとても時間も労力もかかることだが、大学時代から10年以上を重ねていくうちに、興味を示してくれる聴き手の方々、運営の方々に巡り合えるようになってきた。
私にとってあくまで自然なことは、やはりまだ「独特」と映るのかもしれない。それでも素晴らしいと思う作品や、文化に対する考え方、社会に生きる人間としての在り方を思考する姿はますます輝いて見える。先人の残したものから人間っぽい熱を感じ取る…この感激は止められない。
私の旅路「ひとり実験工房」
こちらの演奏会も、このような活動を長く続けている中で、私の存在を見つけてくださった主催者さんのおかげで実現します。まるで「ひとり実験工房」ですが、実験工房のようにメシアン、シェーンベルク、サティと取り上げたら、やはり「現代の新作」も入れなくては…と思い、友人作曲家の石川潤氏に新作発表をお願いしました。また、シェーンベルク自身が行った演奏会のプログラムも意識しています。
ぜひ、この機会にさらなるお仲間に加わってくださるかたがいらっしゃいましたら光栄です。なにとぞ応援をよろしくお願いいたします。
ご予約は主催者フォーム
深貝理紗子ピアノリサイタル 予約フォーム (google.com)
または私の窓口
に【お名前・一般または学生・人数】を記載の上お申し込みください。(私の窓口ミュジカルティエを通して複数回コンサートチケットやCDをお求めくださった方へは、割引価格が適用されることがありますので、この機会にご利用ください)
引き続きよろしくお願いいたします。
クラシック音楽を届け、伝え続けていくことが夢です。これまで頂いたものは人道支援寄付金(ADRA、UNICEF、日本赤十字社)に充てさせて頂きました。今後とも宜しくお願いします。 深貝理紗子 https://risakofukagai-official.jimdofree.com/