レビュー DYGL "A Daze In A Haze"
日本の4人組インディーロックバンド、DYGL(デイグロー)の通算3枚目となるオリジナルアルバム、"A Daze In A Haze"について紹介していきます。
【収録曲】★はシングル曲
1. 7624
2. Banger★
3. Half of Me
4. Did We Forget How to Dream in the Daytime?★
5. Sink★
6. Bushes
7. Wanderlust
8. The Rhythm of the World
9. Stereo Song
10. Alone in the Room
11. The Search
12. Ode to Insomnia
■アイデンティティの殻を破った楽曲たち
2017年にリリースされたデビュー作"Say Goodbye to Memory Den"では、The StrokesやThe Libertinesなどの、00年代を彩ったUKガレージロックのサウンドをとことん追求してきた彼ら。
理想のサウンドに近づけるため、ボーカル秋山は大学時代に英文学を専攻。イギリス英語の発音、作詞のノウハウを徹底的に学び、ネイティブにも違和感なく受け入れられる"言葉の響き"を獲得した。
ロンドンに活動拠点を移し、実際に現地で生活する中でのインスピレーションを元に制作したという2019年リリースの2nd、"Songs Of Innocence & Experience"においても、サイケやプログレ、ポストパンクなどの様々なジャンルを消化し音楽性を更に拡げつつ、根本の部分には、彼らのアイデンティティとも言えるガレージロックがしっかりと残されたサウンドとなっていた。
そこから2年が経ち、今回の3rdアルバムのリリースに至ったわけだが、まずサウンド面に関しては過去の作品とは大きくイメージが異なっている。
彼らのインタビュー記事によると、本作を制作するにあたり、Green DayやSUM41、Blink-182といったUSポップパンクから、Hilary DuffやAvril Lavigne等のポップスまで、これまでの彼らの音楽性からは想像もしなかったようなジャンルの音楽を参照したそうだ。そこには、かつてティーンを熱狂させた00年代初頭のロック・ポップスのムードを、今の時代なりに再解釈するというアルバムコンセプトがあったのだと秋山は語る。
数多のインディーバンドがひしめく2010年代という時代について秋山は、「大失敗もしないけど大成功もしない時代」と評し、そんな中で「ライブでキッズが拳を突き上げてシンガロングできるような楽曲が欲しい」という思いのもと、#3 Half Of Meを完成させる。繰り返し聴き込んでじっくり味わうと言うよりも、誰もが一聴してすぐに馴染めるようなキャッチーさが売りの楽曲だ。
この"型破り"な楽曲についてはメンバー内でも賛否両論あり、「本当にDYGLとしてリリースすべき曲なのか」と、バンドとしてのアイデンティティに悩んだのだとか。
結果的に挑戦することを選択した彼ら。
「後悔はない。リリースして良かった」と振り返っていることから、確かな手応えを感じていることが窺える。
なお、先程述べたUSのポップパンクやポップスの影響がもろに反映されたサウンドになっているのかと言えば、決してそうではない。彼ららしく、ありとあらゆる音楽を貪欲に吸収した結果、ジャンルレスで、アイデンティティにとらわれないサウンドになっていると言えるだろう。
■メロディセンスに更に磨きのかかった会心のングライティング
ただ"型破り"なだけでは、もちろん終わらない。
元々のソングライティング能力の高さ、メロディセンスにはより一層磨きがかかっており、飛躍的な進化を遂げたと言っていいのではないか。
DYGLの過去作を知っている方に説明するとしたら、前作の#8 As She Knowsのような、メロディアスでポップでキャッチーな楽曲が、更に拡がりを見せているイメージだ。
本作に収録されている先行シングル曲3曲は、どれもメロディラインが光るミドルナンバーになっている。(特に#2 Bangerの中毒性がかなり高い)。それ以外の曲で言うと、#9 Stereo Song、#10 Alone In The Roomなどのクオリティの高い楽曲たちはシングル曲に決して引けを取らない。
サウンド面ではベクトルの違う方向へと大きく転換したが、メロディを重んじる姿勢は変えることなく、むしろ更に磨きをかけてみせた。過去作をよく知る既存ファンにも歓迎されるのではないだろうか。
初めてDYGLを聴くという方にも、幅広く受け入れられるであろうキャッチーな一枚。
是非多くの方に聞いて頂きたいと思う。
#音楽 #レビュー #DYGL #A Daze In A Haze
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