見出し画像

がん体験備忘録 ♯20 肝臓編⑦〜退院に向けて

手術は無事終了。先生に「まずは退院が次の目標です」と言われた。

胃腸よ 目覚めよ ①

 個室に入って3日目か4日目だっただろうか。「少しずつお腹を動かしましょうね」ということで、栄養ドリンクを出された。手術後は、口からは何も入れていなかった。
 100mlの小さな紙パック。これをチビチビと飲むのだが、あり得ないくらいゆっくりのペースでしか入っていかない。
 1回目はほとんど飲めず。3回目でようやく完食(飲?)できたが、なんと2時間かかった。大げさな話ではない。小鳥だってもうちょっとさっさと飲むだろう。水分が入ると吐きそうになるのだ。
 それでも、動いていない胃腸を少しずつ動かさなければと頑張った。6回目くらいには1時間程度で飲めるようになった。

胃腸よ 目覚めよ ②

この頃、ベテランの看護師さんが「お腹を働かせる運動」ということで、ベッドに腰掛けて足を上下させる運動を教えてくれた。そのほかに、立って壁に手をついて踵を上下させる。
 ベッドに寝ていても痛いし、起きたら起きたで痛いのだが、いろいろ姿勢を変えるついでにこの運動をしていたら、明らかにお腹が動き出した。お腹に聴診器を当ててくれる看護師さんと一緒に喜んだ。

 こんな小さな動きが全身に影響を与えるということが、驚きだった。

リハビリ室1日目

 手術後、まだ導尿管が付いている時(おそらく手術後3日目くらい) に、「リハビリに行きます」と言われた。
 動くと吐きそうなので、受け皿を握りしめて車椅子に乗る。尿を溜めるパックも同伴だが、こういう時にパックの中身が見えないようにカバーをしてくれるのが「さすが日本の病院!」と感動した。

 リハビリルームに行くと、理学療法士の先生が待っていてくれた。車椅子に座っているのもやっとで、とても自分の力では立ち上がれない。
 座ったまま踵の上げ下ろし、足の上下運動などをした(ような気がする。)その後、先生の腕につかまって、数回立ち上がる練習、続いて、腕を支えてもらいながらゆっくり10歩ほど歩く。
 歩いたところまで車椅子を持ってきてもらってこの日のリハビリは終了。時間にしておそらく20分もかからないくらいだったと思う。

リハビリ室2日目

 翌日も車椅子でリハビリに行ったが、「1日1日回復が実感できていれば大丈夫ですよ」の言葉通り、確実に体に力が戻りつつあることを感じていた。リハビリルームのスタッフの方に
「昨日よりしっかりしていますね」と言われて、嬉しかった。

 リハビリメニューは、ボールを腿の間に挟んで足の力で押す練習、足首に少しおもりをつけて足を上下させる運動など、1回目より少し増えた。それでも、「この程度でいいのかしら? もっとやりたいな」と思うくらい、軽いメニューだった。

その後

 三日目からは車椅子ではなく自分の足でリハビリに行けるようになった。退院まで毎日リハビリルームに通ったが、足の上げ下ろしの回数が増えたり、歩いたりと少しずつメニューは増えた。最後は自転車漕ぎもやったが、全体的には負荷はとても軽いものだった。

「歩くことが回復への近道」とのことで、個室から4人部屋に移り、病棟内も歩いた。お腹が痛いので、点滴を引きずりながらヨタヨタゆっくり。

 病室にいらした先生方に「Musiklehrerinさん、さすが、回復早いですね! 若いからね!」と言われた( ;∀;)  私は世間的には決して若くはないが、入院患者の中では確かに若い方だ。

 70過ぎた方の開腹手術の話は珍しくない。50にならない私がこんなにキツイのに、お年寄りにとってそれがどれほど大変なことか…。
 「手術をした」とケロッとおっしゃる皆様。皆こんな修羅を乗り越えていたのかと、初めて思った。

退院*\(^o^)/*

 そうこうしているうちに、体は日々回復してくる。お腹に入っていた管を抜いた途端痛みもスッと引き、その数日後、めでたく退院となった。緊急入院してから1ヶ月余りが経っていた。

余談‥外に出て

 病院にいる時は「ずいぶん歩けるようになった」と思ったが、外に出て驚いた。

        人々の動きのなんと速いこと!

 私は元々歩くのが速い方だが、退院後数ヶ月たっても、歩いている時にどんどん抜かされる。自分としては、全力で歩いているにもかかわらずだ。
 改札口付近の人の波も速くておそろしい。スーパーでは買い物している周りの人の素早さに慄く。世の中の人の流れについて行けない。 

 手術、入院は体力を落とすんだなあとしみじみ思った。

 そしてもう一つ。

    「ヘルプマーク」を付けている方、つえをついている方が多い!

 このような方が増えたのではない。私が見えていなかったのだ。
 自分がさっさと歩けなくなって、初めて目に入ってきた。
 見えていなかった自分が恥ずかしくなった。

が、

一年ほどして気がついたら、やっぱりガンガン人を抜かしながら歩いていた。(;_:)

 さっさと、でもしっかり目を見開いて、今日も歩こう。

♯肝臓がん
♯術後リハビリ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?