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がん体験備忘録 ♯11甲状腺編~⑪治療の仕上げ

甲状腺がんにまつわるあれこれを、思いつくままに書いて10回。残すは退院後の治療のことだ。

1 自宅での痰の吸引

 退院時に、「自宅用痰の吸引器」のレンタルを紹介してもらった。医療機器のレンタルなんて初めてだ。申し込みは至極簡単。あらかじめ書類に必要事項を記入して退院前に送るだけだったと思う。退院時に病院で、吸引用の管と消毒用アルコール綿をもらい、帰宅してその日のうちに家に届けられた。大きさは小型の加湿器くらいで、使い方は病院のものと同様。
 喉の穴が小さくなるに比例して、痰が絡む量も減っていった。職場にこの機器を持ち込まなければならないかと心配したがその必要もなく、自宅で使ったのは1か月程度だった。
 このような医療用機器を安価にレンタルできるシステムがあるなんて、知らなかった。返却も至極簡単。助かった。

2 喉の穴を閉じる

 手術の時に気管切開をして喉に穴が開いていたが、麻痺していない方の声帯の動きが戻ることが分かったので、穴に入れている管を外して穴が自然に塞がるのを待っていた。

 ところが、塞がる前に皮膚が出来上がってしまい、自然には閉じない状況に。仕方ないので縫い合わせることになった。

 縫い合わせたのは10月某日。診察室のベッドで麻酔をして、針と糸でキューッと縫い合わせた。3か月ぶりに穴がない喉。晴れて首までお湯につかり、頭のてっぺんから思い切りシャワーを浴びられるようになった。首にいちいちタオルを巻かず、思い切り湯舟に浸かり、思い切りシャワーを浴びる。これができるって、なんて幸せ\(^o^)/。

3 放射性ヨード治療

 手術で目に見えるがんは取ったものも、細胞レベルで残っている可能性がある。甲状腺がんの手術後、ヨード治療を行うのは比較的一般的らしい。

 放射性ヨード治療は、放射性ヨードの入ったカプセルを飲むことで、放射性ヨードを癌細胞に選択的に取り込ませ、これを破壊することを目的とする治療法で、甲状腺乳頭癌および濾胞癌が治療の対象となります。(都立駒込病院HPより)

 ヨード治療を行うためには、数週間前から甲状腺ホルモンのチラージンの服用を止め、ヨードが含まれる食べ物(海藻類 魚介類など)を一切取らないようにしなければならない。昆布だし、昆布エキス含有食品も絶対NGなので、和食には要注意だ。治療の1週間ほど前、友人が食事会で和食のお店を予約してくれたが、電話をして私だけ別メニューを用意してもらった。(気持ちよく対応してくれた)

 通っているT大学病院ではこの治療を行っていないので、地域のがんセンターを紹介された。大学病院と同じ市内にがんセンターがあるというのも驚きだった。

 指定された診察室入口には「放射線管理区域」のマークがついており、靴も履き替えるように言われる。

 このヨード治療、カプセルを飲むと体から放射線が出るので、隔離部屋に入院するのが基本のようだが、入院の順番が回ってくるのを待つととても遅くなるとのことで、自宅隔離で行うことになった。

 カプセルを飲む日。看護師さんがスープジャーのような器を手に個室に来られ、看護師さんの目の前で中のカプセルを飲むように言われる。少し緊張しながらゴックンと飲み込み、そのまま1時間ほど待機。公共交通機関は使えないので、親に車で迎えに来てもらい自宅へ帰った。(車の中で両親を被ばくさせないか心配だったが、そんなにすぐには放射線は外には出ないとのこと)

 その後丸3日は外に出ることは禁止。食料なども買い込み、自宅療養となった。

 当日は何も変化なく、のんびり読書などして過ごせたが、翌日からだんだん吐き気がしてくる。2日目・3日目は気持ち悪くて体もだるく、何もできなかった。

 4日目くらいに再びセンターに行き、体から出ている放射線が基準値以下であることを確認して、外に出る許可をもらった。が、完全に気持ちの悪さなどから解放されたのは、その3~4日後だった。

  時はちょうど2学期の終わり。好きなお店で開かれた忘年会には行けなかったが、新年をスッキリと迎えられたので御の字だった。 後に調べたこところ、がん細胞の集積がしっかり認められたとのこと。(つまり、この治療は必要性があり、かつ効果があったということ。)今のところこの治療も1回で終わっている。

時には空を見上げて深呼吸!

 甲状腺がんにまつわるあれこれ、覚えておきたいことは全部書いた(と思う。) お読みいただきありがとうございました。
 声の復活に向けて行った声帯の2つの手術(披裂軟骨内転術&声帯ポリープ切除)は肝臓がんの後に行ったので、これについては、またいずれ。
                      (甲状腺編 完!)

4 余談

 甲状腺がんの体験も過去のものになった…と言いたいところだが、この影響とは一生付き合わなければいけないことを痛感する日々だ。
 副甲状腺を全摘している影響で、骨代謝が完全に止まっていることが判明した。カルシウム不足からくる手足、体の一部のしびれも、今や普通のことになっている。血液中のカルシウムとリンのバランスが悪すぎるとのこと。(カルシウムが作られない関係。詳細は割愛します。)生命維持にも影響するので治療が必要と言われた。
 自然の為せる技に改めて敬服する。人間の体の機能を人工的に作り出すのは、なんと難しいことか。人間の体は、なんとうまくできていることか。
 治療法があることに感謝。折り合いをつけながら付き合っていこうと思う。

 次回から、肝臓がん編に進みます。





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