ピアノ演奏における基礎とは何か?

音楽指導者として長年考えてきたことがあります。

演奏、特にピアノ演奏における基礎とは何か?

ということ。

私が子供の頃受けてきたピアノレッスンというのは、テキスト(昔ですとバイエルやメトードローズ等)を先生にテキストの順番通りに宿題を出され、毎週それをこなし、間違いを直すものでした。

ただ最近のレッスンもテキストこそ様々なものが出ていますが、やってることはさほど変わっていない、という噂を聞き(^_^;)))

先生と生徒はいったいどこに向かってレッスンをし何をゴールとしているのか?

と疑問がフツフツと沸いて来まして
( ´△`)

少なくとも、ピアノを学ぶ際の基礎について以下のような意識でレッスンをしている人間もいるということを知って頂こうと思った次第です。


【インプットとしての基礎】

 子供の頃に養うべき音楽の基礎をたった一つ挙げるとしたら

「音楽を記憶する力」

だと思っています。

「容量の大きさ・幅広さと深さと立体性」

全てにおいてです。

 ですから先ずは耳から音楽情報を受け取る力(聴く力)を高める必要があり、読譜に優先します。幼児期に読譜より「聴いておぼえる」を重視しています。

 ソルフェージュの一要素である「聴いてドレミに変換する能力」を高めることもある程度重要ですが「音楽そのもの」を記憶できることにより重きをおいています。


 次に読譜。自分の中に貯蔵した音楽を基に「楽譜」から「音楽」を読んでいきます。
それは「音符を読む」ことと似て非なるものです。一つ一つの音符を読むことよりも圧倒的に優先されます。

 
~「楽譜どおり」とは~

作曲家の意図を不完全なツールである「楽譜」から読み解く作業です。その不完全な「楽譜」の表面だけをなぞってもけして「楽譜どおり」にはならず、作曲家が当然作曲のベースにしていた「理論」と「語法」を知り作曲家が生きていた当時の音楽常識・文化等も知る必要があります。それができて初めて「楽譜どおり」となります。


【アウトプットとしての基礎】

 演奏とは、自分の中に溢れている「音楽」をピアノという楽器を通して他の人に伝える作業です。ですから当然「機械的で均等な音」を求めて何時間も弾くことは基礎ではないことになります。また「何も考えずに身体が動いて弾ける」も基礎ではありません。「指を鍛える」ことでもないと考えています。「演奏中に如何に素早くたくさん脳が動くか」が大切だと考えます。
 また「誰かの言うとおりに演奏できる」ではなく自らの求める音・音楽を自ら工夫したタッチや体の使い方によって表現できることが演奏する喜びにつながると思っています。

 
楽譜から読み解った作曲家の描いていた音楽を自分が再生するために

①身体をリラックスさせ(脱力)

②聴くことに神経を研ぎ澄ませ

③メロディーのおしゃべりや和声の移り変わり等による音楽の表情を聴く人に伝えるようにタッチをコントロールしながら弾く必要があります。それをハノンであれ曲であれ活用しながら徐々に習得していくことがアウトプットの基礎だと考えます。

 
【最後に】

 ピアノ演奏はなんのためにするのでしょう?

演奏者が自分の中にある音楽を心で感じ→

余すところなく現実の音にでき→

その音楽を聴いた人が感動する……

そこにこそ幸せがあるのではないでしょうか。

 そのためのレッスンをこれからも続けていきたいと心から願っています。

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