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マーラーはソングライターだった 「さすらう若人の歌」 マーラー作詩・作曲

ポール・サイモンの「クレイスランド」という1985年発表アルバム制作過程を追ったDVDを見ていて、その中でサイモンが自分のことを「ソングライター」と称していることが、印象に残っています。

そうか、歌詞と曲を書くライター=「ソングライター」ですね。ポールの場合、ほとんどの曲を自分で歌うので、シンガー・ソングライターになるけれど、、。

驚きの事実!!マーラーは、「ソングライター」だった、、。
(マーラーファンの方は既にご存じでしょうが)

「さすらう若人の歌」Lieder eines Farhrenden Gesellen は、「交響曲第1番」と同じメロディの出てくる、関連の深い作品。4曲で構成される歌曲。オーケストラ付き歌曲です。

そして、この歌の第2曲から4曲までの詩は、なんとマーラー自身が書いたもの。作曲家として、とてつもない天才であることは知っていたものの、自分で詩まで書くとは全く知らなかったので驚きました。

第1曲目、これは、自分が愛していた女(人)が結婚してしまうその日の心情を歌う、まったくもって情緒過剰型べったりの歌。でも、たぶん若き日の心なら、これは十分理解できるはずですから、感情移入してみたらどうでしょう。メロディも、情緒たっぷりです。
中間部のメロディは本当に美しいので、心が洗われます。
でも、後半で聞こえる、静かな怒りの歌が、印象に残ります。
歌の詩は、「角笛」民謡詩集から借用し、マーラー自身で大幅に改編したとされます。

第2曲目は、まさしく、「交響曲第1番・第1楽章」です。牧場を楽しげに歩く若人の姿をすがすがしく歌っています。もちろん、彼は、自分が好意を寄せていたひとが、嫁いだ悲しみを心に秘めて、それを忘れるために、楽しげに歩いているのですが、、、。結局歌の終盤では、喜びの心も、なんとなく空しく思えるような。結局強がりなのですから、仕方がないのでしょうが、その悲哀が込められた美しいメロディも、いい味が出ています。

第3曲目は、「僕の胸には灼熱の刃が」と題名がつくそれこそ、押さえていた感情が露骨に外に出る歌。痛ましい!

第4曲目、ふたつの青い目、彼女の瞳を忍び歌う、まるで葬送行進曲。交響曲第1番の第3楽章でも使われていたメロディが悲しく響きます。ここまで絶望的な気持ちに、若い日々は陥っていたんだろうか。

バーンスタインのピアノ伴奏

色々なソリストとオーケストラの組み合わせで録音されているこの歌、やはり定番は、フィッシャー・ディスカウの演奏でしょう。歌のうまさは絶品です。

そして、先日見つけたのは、バーンスタインがピアノ伴奏で、フィッシャー・ディスカウとルードヴィッヒが歌うという珍しいCD。指揮者、作曲家、そして名ピアニストでもあったバーンスタインが自ら伴奏をしているのですから。

これは、オーケストラとの共演前のプロローグのような録音であったようです。しかし、この演奏から感じるダイナミックさは、プロローグなんかではなく本番。まさに真剣勝負で、聞き応え十分です。何度も何度も聞きたくなります。

レナード・バーンスタイン ポートレイト
録音1968年
歌曲集「少年の不思議な角笛」
クリスタ・ルードヴィッヒ(メゾ・ソプラノ)
ワルター・ベリー(バリトン)
「リュッケルトの詩による歌曲集」より
「若き日の歌」より
「さすらう若人の歌」
ディートリッヒ・フィッシャー=ディスカウ(バリトン)
レナード・バーンスタイン(ピアノ)
SONY
SRCR-9129~30


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