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「雨に負けぬ花」 Flowers Never Bend With The Rainfall/サイモンとガーファンクル 「パセリ、セージ、ローズマリー&タイム」第8曲

短い4小節の前奏がとても印象深いです。
 
「ポール・サイモン・ソングブック」でもギターの弾き語りで収録されています。時はアルバム「パセリ・セージ・ローズマリー&タイム」の三年前。「パセリ・セージ・ローズマリー&タイム」版では12弦ギターが加わり、ガーファンクルのハーモニーが歌をさらに盛り上げています。

12弦ギターのコードストロークと、スリーフィンガーピッキングで爽やかな前奏に続き、二人のユニゾンで始まるこの歌。歌の底に秘められたものの重さに、あらためてはっとさせられるのです。

眠りの回廊を通り
暗く深い闇を過ぎて
僕の心は混乱の中で踊り跳ね回る
何が真実かわからない
心で感じるものに触れられない
僕はただ幻想の中で、盾に隠れている

原詩 Copyright:Paul Simon /迷訳:musiker 以下同

(以下全コーラスで繰り返し。原文の見事な韻をお見せできないのが残念)
だから僕はただひたすら、自分にいいきかせる
僕の人生は決して終わることはないし
花だって雨に打たれても折れ曲がりはしない、、、と

 花が折れ曲がらないことなど、本来ない。人間の人生が終わらぬことなどない。しかし、自分を偽り、幻想の中で心を閉ざしている主人公がこの歌にはあります。

僕の壁の鏡には
陰鬱でちっぽけな姿が映っている
それが僕であるかはわからない
神と真実、そして正義を映す光は
眩しくて見えない
だからあてもない道を、夜さまよう

鏡に映る自分は真実の自分だろうか?という問いは、日常における人間の苦悩を言い表しています。だから人は常に世をさまよい歩くのでしょうか。

人が生まれてきて
演ずるのがキングでもポーン(pawn)でも
喜びと悲しみの境界線は細く紙一重
だから僕の空想は
現実のものとなる
僕はなるべきものとなり、明日に立ち向かうしかない

pawnとは、チェスの中で最も価値の低い駒。将棋でいえば歩兵です。キングは、王将ですね。喜びと悲しみの境界線とは、盤の升目でしょう。自分は自分であるしかないその宿命を見つめ自分は自分であろう。来るべき明日から逃げることはしない。そんな心の中の決意を歌にポールは込めています。

「雨に負けぬ花」、英語のタイトルを忠実に訳せば、「雨にも折れぬ花」となります。宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を思い出しますね。でも、詩の内容からすれば、ぴったり一致します。

自分を偽る。でも、偽っているのではなく、自分を奮い立たせている、励ましている。明日を信じて。そうして人間は一生を生きるのではないでしょうか。

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