見出し画像

我が子を救いたまえ Save the Life of My Child/サイモンとガーファンクル「ブックエンド」第2曲

騒がしい歌です。高いビルから飛び降りようとしている少年を見ながら、大騒ぎする人々の光景を実況生中継するアナウンサーのよう。 

腹の底に響く低音部のけたたましいエレクトリック音、べース、そして妙にクリアなアコースティックギターによる伴奏に続き、歌うのは、ポールによるあわてふためいた歌声

「なんてこった、飛び降りちゃいかん!」
少年がビルの縁に座っている
ぼんやりとしていた老人も我にかえる
見ていた誰もが、少年の命が助かるなんて奇跡に近いと思っていた

Copyright 詩&曲:ポール・サイモン/迷訳:musiker 以下同

早口でポールはまくしたてるように歌う、というかしゃべっているような感じです。

そして、この歌で共通するさびの部はアートと共に妙に美しいハーモニーで天使の歌声のようです。

Save the life of my child
息子を救ってください
Cried the desperate mother
絶望のどん底にいる母親は叫ぶ

手拍子にのったこの部分、内容を知らず曲だけ聞くと、軽いノリが粋な雰囲気でとてもいいです。なんだか妙なバランスですね。

第2番では、

スーパーマーケットの女性が走り警察を呼ぶ
「少年は薬をやっていたようだ」
とデイリー・ニューズには載っていた
ニューヨークタイムズにはそう書かれていなかったが

ニューヨークタイムズは、その事実を無視したのでしょうか?

そして前奏と同じ間奏に続き、なぜか「サウンド・オブ・サイレンス」の録音冒頭部が重ねられます。S&Gはそのテーマである「疎外感」を「我が子を救いたまえ」において別の形で表現しようとしたのでしょう。

第3番、

パトカーがやって来て、止まり
警察官が驚愕して吐き捨てる
「警察が本来やるべき仕事ができんじゃないか!
若い奴らは法律というものをまるで無視するんだからな(ブツブツ、、、)」

子供と大人との対立、官と民の対立、今の時代も昔も全く変わらないよう。規則を守らせることに躍起となる側、自由でありたい側の反抗。すべてそれらが行動に現れてくる、時には大事件にまで発展していく、、。

人々のつぶやき、、、
子供たちはどうしちゃったのかしら?

しかし、子供を助けてと泣き叫ぶ母親の祈りとは全く別の展開となってしまいます。

第4番では、少年はスターになってしまう。飛び降りという行為が、他人である観衆からは、ショー化してしまうのです。

暗闇となり、群衆は興奮で騒ぎ出す
エキサイティングな休日になった
スポットライトが少年に当てられると

 静かに、しかし悲しげに、2人は歌います

He flew away
彼は舞い降りた(飛び降りた)

この部分、聞くたび私は背筋が凍る思いがします。あまりにも美しすぎるから。

飛び降りたんです、少年は。つまり死んだのでしょう。
なのにこんなピュアな歌声!!なんと残酷なコントラストでしょうか。言葉を失ってしまいますね。

そして、最後次の一行が繰り返されます。
サイモン&ガーファンクルが「我が子を救いたまえ」で訴えたかったことは、ここに集約されています。

Oh my Grace, I got no hiding place
女神様、僕には隠れる場所もないんです


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?