サイモンとガーファンクル「水曜日の朝、午前三時」Wednesday Morning 3 AM 同名アルバム第12曲
「水曜日の朝、午前三時」 Wednesday Morning 3 AM
美しい詩です。まるで映画のワンシーンを思わせるロマンチックな描写。"Asleep with the night" という短い表現で、「夜」と「眠り」がひとつになった感じが見事に現れています。この詩の主人公の「できれば夜が明けないでほしい」という気持ちが込められているのでしょう。彼女の髪の毛は、彼には「安堵」そのものの象徴。月の光を反射させ自分の枕元で揺れる様子は彼自身の心の揺れも象徴しています。
言葉の繋がりも絶妙で、メロディにぴたりと吸い付き流れるように淡々と歌は進みます。詩の最初の四行は、アートのメロディに、ポールの低音ハーモニーという構成ですが、次の二行ではポールのハーモニーが高音に変わり、歌の音色(変な表現でしょうか?)が微妙に変化しています。この絶妙のコンビネーションとバランスこそサイモン&ガーファンクルの世界。それがわずか20秒ほどの1コーラス目だけで実感させられるんですね。
2番では、眠る彼女の胸が呼吸で上下する様子を見ている主人公が
And I watch as her breasts
Gently rise, gently fall
という表現で歌われます。しかし彼の心は別の所にあります。深く沈んだ絶望感。「これが最後」という重い気持ち。できればこのままでいたい、ずっと。
3番で、主人公は自分が犯した罪を語ります。
酒屋に押し入り強盗をした主人公。この二行の部分の歌詞の音が、その重い意味とは逆にとても美しい印象を受けるのは、私が英語を母国語としないからかもしれません。けれどその美しさによって、犯した行為により得るものの軽さ(わずかの収穫)と、罪の重大さとのコントラストが強烈に伝わってきます。
4番では、
劇の台本という表現で、自分の罪を架空の夢に見立てたい主人公の気持。
そして
そばに若い自分の恋人が眠る美しく優しい情景と、主人公の後悔、焦りが、十二分に伝わる見事な詩ではないでしょうか。
わずか2分14秒という短い歌が、2時間の映画にも匹敵するほどのドラマを聞き手に感じさせるという点。「水曜日の朝、午前三時」はサイモン&ガーファンクルのデビューアルバムタイトルそのものに決められたのも納得できる作品です。
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