見出し画像

「夢の中の世界」 The Dangling Conversation/サイモンとガーファンクル「パセリ、セージ、ローズマリー&タイム」第7曲

相変わらずポール・サイモンの美しい詩がとてもいい。
ギターの前奏に続く、控えめなポールのソロに、アートがハーモニーを付け、伴奏にはストリングスが要所に加わる。
一言で、ピュアーというか、洗練された歌です。

でも、この歌の詩をよく読むと日本語題名と、歌の内容とのギャップの激しさに唖然とします。私はこの曲を初めて聴いた頃からこの文書を書くまで詩の内容を全く理解していなかったのでした…。(歌詞カードの内容を理解していなかっただけですが)

漠然としたイメージは・・・・
夢の中つまり、二人だけの世界にいる恋人同士、二人がそれぞれ本を読むという別の行動をしていても、愛が通じ合っている、ウツクシイ話、でした。いえ、疑うもせずに信じていたのです。

superficial sighsという言葉。発音を聞いてなんとなく、神秘的雰囲気が漂うように感じていました。ところが、意味は「無意味なため息」らしいです。
むむむ……私のイメージと全く違う展開です。

心がすでに離れてしまった恋人同士。その嘆きを、けなげに美しく男が詩的に語る。そんな歌。いったい誰が「夢の中の世界」なんて日本題名をつけたんでしょう?

It's a still life water color
(水彩画のような静かな日々)
Of a now late afternoon
(遅い夕方になった、今)
As the sunshine through the courtain lace
(レースのカーテンから陽が透り)
And shadows wash the room
(影が部屋を洗い清める)

Copyright:Pauls Simon 迷訳:musiker 以下同

歌の最初の部分を抜粋しましたが、私の陳腐な訳(迷訳と称しています)が全く必要がない位、美しい詩だと思います。T.S.エリオットという英国の詩人の影響を受け、サイモンが書いた詩ということですが…。

特に、Shadows wash the roomというフレーズは好きです!

ポールが、英国滞在時代に、キャシーという恋人がいて、彼女との触れあいで沢山の歌を書いたとされています。この曲もそのひとつなのでしょうが、こんな悲しい歌があったなんて小さな衝撃!

でも私はまだ完全に信じているわけではありません。そんなはずはない、ウツクシイ愛を歌っているんだと、いう信念で英語の歌詞を何度も読み返してみたいと思います。無駄な抵抗ですか。

哀しい内容はともかく、神秘的な歌声が、私たちの疲弊した心を洗ってくれることでしょう。

この作品は録音も時間をかけて完成したサイモン&ガーファンクルの自信作でした。サイモンとガーファンクルシングルリリース第4作としても発表されました。しかし、最高第25位と売れ行きはかんばしくなく、二人はきっと意気消沈したことでしょう。いい歌が必ずしもヒットに結びつくのではないという現実を、目の当たりにした一例でもあります。

歌も好きですが、ポール・サイモンが自由自在に操るアコースティックギターのアルペジオ、特に親指奏でるベースパートが好きで、ときおり歌そっちのけで聴いてしまいます。

最下部にリンクを貼った「リンカーンセンターでのライブバージョン」も素晴らしいです。ポールが弾くギター、二人のハーモニーだけで、この完成度。感激です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?