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「どこにもいないよ」Somewhere They Can't Find Me/サイモンとガーファンクル「サウンズ・オブ・サイレンス」第5曲

この歌は「水曜日の朝、午前三時」と共に語るべきでした。なぜなら、タイトルと曲調が違うものの、詩がサビの部分を除きほぼ同じだからです。

ポールが加えた詩は、歌の後半サビの部分

But I've got to
でも僕は
Creep down the alley way,
細道をこっそり進み
Fly down the highway
公道を飛び越え
Before the come to catch me
彼らが僕を捕まえに来る前に
I'll be gone
いかなきゃ
Somewhere they can't find me
どこか見つからない場所へ

©Paul Simon /迷訳:musiker(以下同)

罪を犯した逃亡者の心情が生々しいですね。アクション映画的に豪快に逃げるのではなく、泥棒のようにコソコソ歩くという表現もおもしろい。

歌は3番あり、各々前半は、「水曜日の朝、午前三時」の詩(2番目は省かれています)を少しアレンジし、後半に上の6行を使っています。

曲調は、ブルースのようなロックのような、テンポののりがよく味のあるものです。特にサビの I'll be gone の部分の和音が、S&Gにしては珍しい変則和音なところも新鮮ですし、その絶叫の後、急に声量を落とし、They can't find meと 歌うのも、対照的でおもしろい。

なぜ同じ詩を別の曲調で使用したのかについては謎です。
当時、アルバム制作にわずかの時間しかかけられなかった状況から推測するとコード進行を先に決め、すでにある詩を少しアレンジすることで、即席ラーメン的に作ったのではないかと。これ私の想像です。

それにコード進行が、「どこにもいないよ」の次の収録曲「アンジー」に似ているのも気になります。前奏部分は、まさに「アンジー」の前奏と同じ。ギターだけの前奏の後、少し音程が下がっているベース音(厳密にいえば音が合っていない)が唐突に入り、ドラムや金管楽器が加わる伴奏は、「サウンド・オブ・サイレンス」の録音(後で別トラックに楽器を追加する)方式ですから、ますます怪しいですね。

タイトル「どこにもいないよ」についてはどこかでも書いた通り、英語タイトルと違い、作品のイメージから考えるとふさわしくないので今からでも何とかして欲しいものです。
でも、既にファンには馴染み深いタイトルでもありますので、このままでもいいかな?


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