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冬に聴きたい back number ~ 西藤公園、ヒロイン ~


私は、冬になると back numberが聴きたくなる。

どうしてだろう?

それは、

白い息
ひんやりした空気感
せつない気持ち

それらが溶け合った風景が胸に浮かぶからです。

結晶

back number の音楽には季節感がある。

どの季節の back number の曲も心に響きますが、冬の曲は聴く者の気持ちにスッと染み入ってくる。

情景が目の前に浮かび、その世界に引き込まれてしまう。

私は、back number の 「西藤公園」 を聴いて、冬の印象が変わりました。

この曲の出だしの歌詞を聴いて、ハッとしたのです。

私は冬が好き、言葉が白く目に見えるから

なんて素敵な言葉でしょうか、今までそんなこと考えてもみなかった!

しかも、この言葉をメロディーにのせて歌われると、スッと胸に入り込んでくるのです。

私はこの一言で、冬が好きになりました。

好きな人がそんな言葉を言ったとき、主人公は次のような思いを心に浮かべます。

ああそうかこんな風に 空に上がって消えちゃうから 
うつむいたままの君にまっすぐ伝わらなかったのか

「白く吐く息が、言葉となって、空に上がって消えていく・・・」

なんて繊細なやりとりをしているのだろう!

ほんのわずかな光景を、こんなにも胸に染みる言葉で表現できるなんて、、、

きっと、ボーカルで作詞をしている清水依与吏(しみずいより)さんは、繊細でデリケートな人なんだろうなと、この曲を聴きながら私は想像しています。

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この曲で、一番大切な想い。

それは次の歌詞に込められていると思う。

私は冬が好き 
僕は君が

最初、私はこの曲が入っているインディーズ時代のデビューアルバム『逃した魚』をCDショップで買ってきて、そのまま車のカーステレオに入れて聴いていました。

アルバムの最後の曲がこの「西藤公園」。

私はこの歌詞を聴いたとき、何が起きたのか理解できずに、車を運転しながらドキドキしたのを今でも忘れられません。

なぜなら、「僕は君が」で、突然歌い終わったからです!

「どうして突然、歌い終わるんだ!」

「何でその先を言わないんだ!」

当時の私は、もどかしい思いに包まれました。

心理学的には、

未完了な思い

というのだろうか。

主人公の気持ちは「僕は君は」で止まっているのです。

未完了な思いのまま・・・

なんてせつないのでしょう。

そんな主人公の思いは、この曲のエンディングに込められています。

この曲はイントロがなく、ボーカルのカットインから始まります。

その逆に、

エンディングが長く、

歪んだギターがえんえんと鳴り響きます。

それはまるで、主人公の気持ちのように ・ ・ ・ 。

未完了の思いが、長いエンディングにつめ込まれ、聴く者の胸に突き刺さるのです。


この曲の唯一の希望は ・ ・ ・

少し遠回しに なるべく素直に言うよ 
次の春にでも

という主人公の淡い決心。

それでも、ストレートに気持ちを伝える勇気はないのです。

好きな人に気持ちを伝えたくても、

少し遠回しに

なるべく素直に

それが精一杯なのです。

せつないですね。

そういえば、

次の春にはどうなったんだろう?

この主人公は気持ちを伝えられたのだろうか?

私はときどき、そんなことを思います。

主人公が自分の気持ちを伝え、

人生の一歩を踏み出せたことを願っているのです。

< 清水さんの繊細な想いを詰め込んだ「西藤公園」、静かな気持ちで最後まで聴いてほしい >


そういえば、この曲の続編はあるのだろうか?

そんなことを考えることがあります。

この曲の主人公がどうなったか気になるからです。

世間では続編について、いろいろ言われていますが・・・ 

もし「西藤公園」 の続編があるとしたら、

それは 「ヒロイン」 だと、私は思う。

それは、「ヒロイン」の主人公の心情から、そんなふうに感じる。

君の街に白い雪が降った時
君は誰に会いたくなるんだろう
雪が綺麗だねって誰に言いたくなるんだろう
僕は やっぱり僕は

やはり、冬の back numberは格別だ。

主人公の淡く切ない想いが、冬の風景とともに染み込んでくる。

歌詞を聴くと、「ヒロイン」の主人公の心情は、「西藤公園」の頃と変わっていないことが分かる。

ただ・・・

ほんのわずかだけ、成長した姿をみることができる

歌詞を見てみると、

雪が綺麗と笑うのは君がいい
でも寒いねって嬉しそうなのも
転びそうになって掴んだ手のその先で
ありがとうって楽しそうなのも
それも君がいい

恋に怯えながらも、ほんの少しだけど確実に成長しています。

「君がいい」

この曲の中で、何度も繰り返されるフレーズ。

「それも君がいい」

「全部君がいい」

気持ちは、しっかりと 「君」 へと向いているのです。

その素直な想いが、私たちの胸を打ちます。

まだ気持ちを整理できていないながらも、好きな人と前向きに向き合う主人公に、西藤公園の主人公の成長した姿を見ることができるのです。

ちなみに 「ヒロイン」のプロデューサーは、back numberと小林武史さん。

小林武史さんはミスターチルドレンのプロデューサーとしても有名ですね。

そんなことも思いながらも、「西藤公園」と「ヒロイン」のサウンドの違いをかみしめていただけたらと思います。どちらも心に響くサウンドです。

街の景色

結局、

「西藤公園」の主人公は、

次の春に気持ちを伝えたいと思っていたけど、、、

もしかしたら、伝えられなかったのかもしれない。

「ヒロイン」 を聴いていたら、そんなふうに感じます。

だけど・・・

「西藤公園」の次の春には、気持ちは伝えられなかったけれど ・ ・ ・

何年後かの冬には、

「ヒロイン」 のような状況 (ドラマ) が待っていて、

そして、わずかだけど、確実に成長した主人公の姿がそこにはあった。


「西藤公園」 と 「ヒロイン」 を続けて聴くと、

そんな気持ちにさせられます。

冬に聴きたい名曲です。


< 淡くせつない冬の名曲「ヒロイン」 >


■ 音楽のかからない音楽番組

私が back number の「ヒロイン」、くわっちが平沢進さんの「空転G」を紹介しています。

■ 執筆者  :  松岡 学




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