3週間/アジを捌く
<3週間>
父が亡くなって丁度3週間が経った。記憶がどんどんと曖昧になっていく。忘れたくはないが忘れてしまう。亡くなったその前の日々とその後の日々は質感が違う。
3週間が経ち、役所の手続きや契約解除や名義変更等、やれることを少しずつ進めているけれど、まだまだやることは多い。多いということはわかっているが、進行具合は遅々としている。「母が快適な生活ができる」ことを目標に進めていくばかり。
祭壇に手を合わせる。亡くなった直後の感覚、父と話をしたりした感覚が、少しずつ薄まっていく。望んでいないのに、少しずつ父が遠くなっていく。
<アジを捌く>
昨日もアジを捌いた。
私が帰省するたび「アジが食べたい」とリクエストしていた。それを捌いてくれた父、職人のように包丁を入れ、頭を切り落とし、はらわたを取り除き、三枚におろし、皮を剥いて、一皿に仕上げる。その手際にはまだまだだが、アジを捌くという行為を通して私は父と対話する。料理を通して思い出す。
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